●怒る「香害」被害者「被害の拡大に加担」
こんな事情があるから、被害者たちは黙っていられない。
フェイスブックには、「香害の増加、化学物質過敏症患者の増加につながるでしょう。NHKが柔軟剤の宣伝ともいえる番組を報道したことに抗議します」「柔軟剤を広めるのはやめてほしい」などの声が寄せられた。
さらに、コンゴまで出かけてこのワザを披露して喜ばせ、健康への影響を知らせずに柔軟剤を売り込んだのは罪深い、という指摘もあった。
この番組について、油脂・石けんに詳しい長谷川治さん(洗剤・環境科学研究所代表)はこう批判している――。
「柔軟剤の成分がたっぷり残った衣類を着て大丈夫なのは、肌の強い人でしょう。そうでない人には影響が出ます。
番組の前半で紹介していた“ヨレヨレにならない洗い方”(洗濯物は洗濯槽の5~7割にする)を徹底すれば、柔軟剤を使わないで済み、労力も少なくて済みます。それなのに、なぜ柔軟剤を推奨するのか。
業界が香りつき柔軟剤の売り上げを増やそうと躍起になっているのを、後押ししているように見えます。
視聴者の受けだけを狙った番組であり、皮膚の弱い人や化学物質に敏感な人への配慮が感じられない番組でした」
公害問題に取り組んでいる日本消費者連盟は、放送2日後の3月15日に、NHKに対し「抗議文」を送った。
「この番組は、香害という公害被害の拡大に加担しているに他なりません」「香害が社会問題となっているこの時期に、その元凶である柔軟剤を推奨する番組を放送したことの責任は重大です。断固抗議するとともに、番組内容の訂正、撤回を求めます」という内容だった。
●NHKは反論、「専門家に取材」「使い過ぎは注意喚起した」
これに対してNHK制作局科学・環境番組部の出田恵三部長は3月22日、次のような回答(要旨)を寄せた。
「番組では、衣類を長持ちさせる様々な洗濯のコツを、大学などの研究機関、メーカーなどの取材を通じて紹介しました。その中のひとつとして『月に1回程度、柔軟剤で処理する』方法を伝えしました」
「上記の方法を紹介するにあたっては、香りによって体調不良を訴える方や化学物質過敏症の方がいらっしゃることを踏まえ、香り成分や界面活性剤などに詳しい専門家や研究機関に取材しました」