「私から読者のみなさんにパスを渡したいという気持ちで作ったので、一般的なレシピ本よりも感覚的な表現になっている部分が多いです。
『必ずしもその通りに作らなくてもいいよ』という言葉を添えて、堅苦しくならないようにしてあります。台所で読者(料理の作り手)の横に立って、アドバイスするような感覚です」
結婚するまで和田さんは料理に無関心で、知識もほぼゼロだった。レタスとキャベツは同じ葉っぱ、アサリとシジミとハマグリは大きさが違うだけと思い込んでいたという。だが、平野レミさんにイチから仕込んでもらったわけではない。最初は独学だったそうだ。
「レミさんに何を聞けばいいのかさえわかりませんでしたし、あまりに初歩的な質問をするのは失礼だと思ったからです。まずは、ある程度のレベルまで作れるようになろうと考えました」
そして10年。和田さんの料理の履歴はコツコツと蓄積されていった。
「私は料理学校に通ったこともなければ、どこかで修業したこともありません。だから著書で手の込んだ料理を披露したとしても説得力がないと思うんです。料理家として活動をはじめて以来、私が紹介して喜ばれるのはどんなレシピなのかという自問自答を繰り返しています。
現時点でこれが私のスタイルだと思っているのは、『簡単に手に入る材料で』『料理が苦手な人でも作れる』、かつ『野菜や肉・魚の栄養をバランスよく摂取できる』レシピです」
現在はテレビや雑誌で大活躍中の和田さんだが、当初はマスコミなどに露出することを躊躇(ちゅうちょ)していたという。
「料理は大好きになっていたし、家にお客さんを呼んで披露できるくらいのレベルには達していましたが、お金をいただく実力ではないと思って、ご依頼をいただいても、しばらくは断っていました。
そんなとき夫が『何か資格を取れば自信もつくし、客観的な視点から勉強できるよ』とアドバイスをくれたんです」
今から8年前、2014年の話だ。子育てがはじまっていた和田さんにとって、学校に通い、実務経験も必要な調理師免許などはハードルが高かった。自分の生活のペースに合わせて勉強できるものを探し、見つけたのが食育インストラクターだった。