プロデュース業も順調で、今なら体力も大丈夫だ――。医師から「まだ完治はしていないが、3年経って血液の数値も安定している。拒絶反応も出ていないから、開店してもいい」と許可をもらい、17年8月、ついに自分のお店「RAMEN CAFE de IINO」をオープンした。


「あっさりIINO 塩煮干」は800円(筆者撮影)
「あっさりIINO 塩煮干」は800円(筆者撮影)

「舌はしびれているし、とにかくはじめは苦い感じがしました。歯ざわり、舌ざわりが頭の中のイメージと全然違う。『しょっぱい』『甘い』『辛い』などの味はわかりますが、風味などはまったくわかりませんでした。いつかは舌が戻ると信じてもがき続けましたね」

 病魔に侵される直前まで、ずっとラーメンを作ってきた飯野さん。食材を組み合わせるだけで、どんな味や風味になるかは頭の中でイメージできた。そのイメージと自分の舌で感じる味の違いを少しずつ戻していったという。「想像通りの味を舌で感じられたらOK」。そう考えて、味覚を戻していった。

「人から命をいただいたので、今後は同じような病気で苦しんでいる人を励ましていきたい。人に恩を返したいんです」

 医師からは、完治までは5年と言われている。骨髄移植をしてから、今年の8月でようやく5年が経つ。まだ油断はできないが、飯野さんは今日も笑顔でラーメンを作り続けている。(ラーメンライター・井手隊長)

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