ゴミの中にたたずむ猫(まごのて提供)
ゴミの中にたたずむ猫(まごのて提供)

「正直、ペット系ゴミ屋敷については同情の余地はありません。本当はその人に『ふざけるな』と言いたい気持ちもあるけど、仕事だし言えません。でも、やっぱり許せないですよ……。人間の小さい子どもと同じで、犬も与えられた環境でしか生きていけない。依頼はありがたいけれど、ペット系のものがくると気は重くなるし、できれば避けたい。孤独死のほうが気持ちは楽です」

 清掃が終われば、部屋自体はスッキリした状態を取り戻す。しかし、気持ちが晴れることはない。

「『今後は気を付けるんだよ』と言うけど、なんだか中途半端な終わり方です。(きれいな部屋が)維持されるとは思えないし、ハッピーエンドで終わることはない。同じ人の部屋を10回以上、清掃したこともある。そこは猫2匹だけで、いわゆる猫屋敷というわけではないけれど、片付けるのが苦手みたいですね。もちろん最初に掃除したときよりひどいことはないけど、それでもすごいですよ」

■飼い主の遺体痕の隣に寄り添う犬の亡骸

 社会問題になっている“孤独死”も影響している。 飼い主が死亡して発見が遅れた場合、ともに暮らしていたペットが遺体の隣で餓死していたというケースもあった。

「警察が遺体を引き上げると遺体痕は残るから、このあたりで亡くなったんだということがわかる。その近くにペットだった犬の死骸があることも」

 想像を絶する現状は自分とは縁遠い話のようにも思えるが、「誰もがそうなる可能性を持っている」と佐々木さんは指摘する。

「猫や犬を飼うときは1日1時間、自分の時間がなくなる覚悟が必要です。飼う前に、その時間や能力があるのか自問自答しなければいけない。たとえ今は大丈夫だったとしても、30代の人が飼うのと70代の人が飼うのとでは全然違う。5年、10年先を見て判断する必要があります。それを考えたうえで、実際に飼ったならばとことん責任を持つ。今、すでにキャパシティを超えてしまっているなら、里親を探すなどして一度手放すことを考える必要があると思います」

キャパシティを超えた飼育はNGだ(写真はイメージです)
キャパシティを超えた飼育はNGだ(写真はイメージです)

 自分で面倒を見ることができる範囲を超えて、動物を飼ってしまう人のことを指す「アニマルホーダー」という言葉がある。暴力を直接ふるっていなくても、飼育放棄はネグレクトと同じだ。一時の感情や甘い誘い文句に惑わされることを、愛情や優しさと勘違いしてはいけない。(AERA dot.編集部・福井しほ)

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