一か所に身を寄せて、じっと見つめる猫たち(まごのて提供)
一か所に身を寄せて、じっと見つめる猫たち(まごのて提供)

 特殊清掃を依頼するにはそれなりにお金がかかるため、経済的なゆとりが必要になる。言い換えれば、「お金がないから去勢手術ができない」という事情があるわけでもない。前出の女性が保護や捨て猫を育てるのも、「助けてあげたい、世話をしたいという気持ちもあったようだ」と佐々木さんは言い、こう続ける。

「捨て猫を放っておけないという気持ちもあるし、根本的には悪い人ではないと思います。人間だから掃除がおっくうになる日もあるし、日々のことに忙殺されて数日間ゴミを放置することもある。それが重なると『もういっか』となって、そのままのことが多いんじゃないでしょうか。ただ、なんとかしてあげたいという気持ちはいいけれど、自身の飼育キャパシティを自覚しないといけない。10頭飼うならそれだけの管理能力とスキルが必要なのですから」

1枚目の写真「マイケル」が保護された部屋(まごのて提供)
1枚目の写真「マイケル」が保護された部屋(まごのて提供)

 さらに悲惨な現場もある。

 佐々木さんが依頼を受けて踏み入った部屋は、典型的なゴミ屋敷。だが、“異常”は足元に潜んでいた。

「フライドチキンのような骨がいっぱい転がっていて、よく見ると毛がついている。なんだろうと思っていたら、鶏じゃなくて猫の骨でした。共食いして、一匹だけが生き残っていたんです。うちのスタッフがその猫を引き取りました」

保護されたマイケル。「最初は威嚇して近づけませんでしたが、今では膝の上に乗ってきて甘えてくるようになりました」(まごのて提供)
保護されたマイケル。「最初は威嚇して近づけませんでしたが、今では膝の上に乗ってきて甘えてくるようになりました」(まごのて提供)

 思わず絶句してしまうが、「私たちの世界では一般的なこと」だと、佐々木さんは言う。

 たとえば、犬を3匹飼っているという30代女性が、ペットホテルなどを使わずに旅行にでかけたときのこと。3日間だけだから――そんな心持ちで旅立ったものの、予定が延びて帰宅したのは10日後。「死んでいるかもしれない」と不安になり、部屋に入れなくなってしまった。1カ月ほど知人の家を転々としたあとで、同社に相談してきたという。

「自分で見るのが怖いからと、依頼してきたようです。当然、犬は死亡していました。こういったペットがかかわる依頼者は後ろめたい気持ちがあるのか、すでに本人は引っ越ししていて、『部屋にあるものは全部処分してください』と鍵だけ送ってくるケースもよくあります。ペットがいることを言わずに依頼される方も……。そんなときは、飼い主を呼び出して怒りたおします。説教してもどうにもならないけどね」

 ビジネスとして請け負う以上、もちろんしっかりと清掃は行う。だが、それとは別に、どうしても怒りがこみ上げる。

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「同情の余地はない」