■身をすくめる市民
公的なデータがなくなる一方で、中国各地では感染者が爆発的に増えている。これまで知り合いが感染したと聞くことはまれだったが、いまでは友人知人に陽性者や体調不良の人たちがあふれている。病院の発熱外来には患者が詰めかけ、薬局では風邪薬や抗原検査キットが売り切れて買えない。
習政権は市民に我慢を求める際にウイルスの脅威を強調してきたため、人々には根強い恐怖感が残っている。
当局や感染症の専門家は手のひらを返したように「オミクロン株の病原性は低い」と力説するが、市民は不安を募らせ、できるだけ外出しないという人も少なくない。
中国は大都市以外の医療体制が整っておらず、重症者や死者が増えることが懸念される。なし崩し的なウィズコロナへの移行がもたらす混乱と恐怖を前に、市民は身をすくめている。(朝日新聞瀋陽支局長・金順姫)
※AERA 2022年12月26日号