封鎖されたまま、火事で死に至る──。ゼロコロナ政策のもとで生きる者には他人事とは思えず、鬱憤や息苦しさへの不満が一気に噴き出す形で抗議デモに発展した。
デモの場では自由にものが言えないことに抗議する白い紙が掲げられ、「独裁はいらない」と共産党の統治手法を問題視し、習氏の退陣を求める声まで上がった。
体制批判の動きを徹底して取り除いてきた習政権下では、異例なできごとだった。
欧州連合(EU)の高官によると、12月1日にEUのミシェル首脳会議常任議長と会談した習氏は「3年間のコロナ禍で、主に学生にいらだちが募っている」と抗議の原因を説明したという。
以前の中国では、多くの抗議活動の矛先は地方政府に向いた。地方の「悪い役人」に責任を取らせることで問題をひとまずおさめる、というのは権力側と抗議側の暗黙の了解という側面があった。体制そのものに問題があると思っても、共産党を敵にまわして抗議の芽をつぶされないようにする、抗議側の「知恵」である場合もあった。中央の責任を問うよりも、懸案を解決する実を取った。
今回は街頭で、最高指導者が名指しで非難されたことに注目が集まった。自身への権力集中にひた走り、10月の共産党大会を経て異例の3期目に入った習氏。絶対的な権力者であることを誇示してきた影響が、思わぬ形で表れたといえそうだ。
この「白紙運動」が政策転換の一つのきっかけになった。厳しすぎる対策から一転、感染者がいることが日常になったウィズコロナ社会に、市民はいきなり放り出された状況にある。
12月13日、市民の行動を追跡するスマホアプリが廃止された。14日には衛生当局が、コロナの無症状感染者の人数を発表しないことを明らかにした。「多くの無症状感染者がPCR検査に参加しておらず、実際の人数を正確に把握することができない」。これが理由だという。
当局はコロナの実態把握を放棄した。