「2号ラーメン」の虜になった飯田さん。お店に訪れると毎回「2号ラーメン」を3杯注文し、徹底的にその味を舌に覚えさせた。
何度もお店に通う飯田さん。その姿を見てなのか、ある日、店主の嶋崎さんから「2号ラーメン」の作り方の手ほどきを受ける。「ラーメン作りまで教えてもらったらもうやるしかない」と心に決めた飯田さん。2010年3月に、実家「飯田商店」の倉庫があった場所に「らぁ麺屋 飯田商店」をオープンした。32歳のときだった。
国産小麦数種類をブレンドし、沖縄の塩「ぬちまーす」を加えた自家製麺を使用。麺へのこだわりは一級品だ。スープは鶏と水のみ。比内地鶏、名古屋コーチン、山水地鶏という最高級の鶏を厳選し、さらに選び抜いた生醤油ダレを合わせ、その上に黄金の鶏油をかける。人気メニュー「醤油らぁ麺」(850円)はとにかく絶品。余計なものは一切なく、鶏を前面に押し出し、一口すすればこれでもかと旨味が押し寄せてくる。
ラーメンに対するひたむきな姿が評価され、今では「飯田商店」のラーメンを食べるために湯河原を訪れる観光客も増えている。湯河原の温泉宿に泊まり、翌朝「飯田商店」の整理券を取って、宿でゆっくりしてからお昼にラーメンを食べるというのがラーメンファンではお決まりのコースになっているほどだ。これほど人気になっても、東京に進出するつもりはないという。父親が遺してくれたこの場所を大切にしたいからだ。
「Due Italian」の石塚さんは「飯田商店」への尊敬を隠さない。
「あの歳でこだわりを貫き通して、あのラーメンを作り出した偉業。彼の人柄と真面目さが『飯田商店』をここまでのお店にしたんだと思います。彼は自分のイメージの中で佐野さんたちがやってきたことをリスペクトしてラーメンに再現しています。先人への愛が詰まりまくって、逆にそれがオリジナリティーになっていますよね。100年後にも残っていそうな一杯だと私は思います」
飯田さんにとっても石塚さんは憧れの先輩だ。
「石塚シェフには初期の頃から見守って頂いています。『Due Italian』は一見、オシャレで女性でも入りやすいというお店ですが、男性の自分でもゆったりと落ち着けるお店です。メニューや内装など本当にカッコよくて自分には絶対に出来ない領域ですが、石塚シェフのお人柄なのか、行くとやさしい気持ちになれるんですよね」
佐野さんのラーメンを新たなジャンルに応用した石塚さんが評価する、飯田さんの真っすぐな一杯。同じ佐野さんを愛するラーメン店主だが、それぞれの道でラーメン界を引っ張っている。(ラーメンライター・井手隊長)