加えて、10人超の羽毛布団に毛布、枕など大量の布団類を準備しなくてもいいし、大掃除や片付けもマイペースに済ませられる。これまでは年末の子どもたちの帰省前に大掃除を終わらせ、子どもたちが帰った後には“2度目の大掃除”が待ち構えていた。「こたつでダラダラと箱根駅伝を見ながら過ごした正月は初めてだった」と言うキヨエさんは、こう続ける。

「いつもと同じ延長線上で迎える正月は、こんなに楽で寛げるものなのかと。これまでいかに“正月らしい過ごし方”を頑張ってやっていたのか、思い知ったような気がしました」

 過ごしたいように過ごす自由な正月を2度過ごし、少しずつ日常が戻ってきた。コロナ禍を機に、「“頑張らない正月”に移行していくのもありかも」と考えるキヨエさんだが、子どもや孫の顔を思い浮かべると、「やはり精いっぱいもてなしてあげるべきでは」という感情が頭をもたげる。

「そろそろ正月ぐらいゆっくりしたいと思う年齢ですが、自分が“もてなす側”でいられるうちが花なのかもしれません。ただ、“迎えてもらう側”にまわるのは、一体いつのことなのだろうと思うこともあります。このまま“もてなす側”がしばらく続くなら、もう少し頑張らない正月の過ごし方を考えていきたい」(キヨエさん)

 キヨエさんのように、「言葉には出さないものの、実は正月に負担を感じている」という人は決して少なくない。

「普段の生活と違うことで生まれるストレスは、年代が上がるごとに感じやすい」とは、世代間の家族コミュニケーションに詳しいNPO法人孫育て・ニッポンの棒田明子理事長。棒田さんの元にも、帰省に関する祖父母世代や子ども世代からの悩みの声が多数寄せられている。

■高い旅費に渋滞 帰る側も負担大

「特に正月は、一年で最も“こうあるべき”という感覚が強まる年中行事。家ごとの慣習や文化が最も垣間見える行事でもあります。例えばおせち料理は一から作るべき、大掃除は年末までに完璧に済ませて新年を迎えるべきなど、“正月だから、こう過ごさねば”という意識が強い人はいまだに多い。そうした意識が強いものほど、どこかで無理や摩擦が生じがちです」(棒田さん)

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