無理しているのは、迎える側だけではない。「実は正月の帰省がブルーで……」と話すのは、妻と子ども2人の4人家族で東京に暮らす会社員・サトシさん(仮名・37歳)。サトシさんも妻も地方出身で、コロナ以前の年末年始は、それぞれの実家を“大移動”するのがお決まりだった。元日まではサトシさんの実家で過ごし、元日の午後に、妻の実家に向けて新幹線と電車を乗り継いで3時間かけて移動する。正月料金で跳ね上がった交通費に、帰省ラッシュの人混み。幼い子どもを連れた移動だけでクタクタに疲れるのが正直なところだが、「正月ぐらい、親と一緒に過ごさなければ」「孫の顔を見せてやらねば」という一心で、互いの実家にやっとの思いでたどり着く。帰省を終えて、東京の自宅に戻るころには、夫婦で心底「今年も何とか“正月業務”を乗り切った」という気持ちになるのだという。

 だからコロナ禍、互いの実家に帰省せず、家族4人だけで東京で過ごした正月は、「こんなにのんびりできるなんて」と清々しかった。会社員にとって正月休みは、一年で最もまとまった休みが取れるという人も少なくない。共働きで忙しい日々を過ごすサトシさん夫婦だが、帰省なしの正月は、自分も妻も義父母に気を使うこともなく、のんびり朝寝坊したり、近郊の温泉宿に宿泊したりと、思いきり羽を伸ばすことができた。互いの実家とは、オンライン通話で顔を合わせ「あけましておめでとう」と挨拶。心なしか、実家の両親も普段よりリラックスした正月を過ごしているようにも見えた。「今までの正月って、本当に大変だったよね」「もう毎年、これがいいね」と、夫婦ともにしみじみ話したのが2年前の正月だ。

 だから「今度の年末年始の支度なんだけど」と、帰省するのが当然のように親から連絡があったとき、サトシさんは「また“あれ”をやるのか」とどんよりした気持ちになった。“帰省ブルー”が重くのしかかっているのは、妻もしかり。夫婦で話し、あと1、2年、“正月業務”を頑張ったら、子どもの成長を言い訳に、帰省しない年を作ろうと話しているという。

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