<老後に野垂れ死にたくなければ、一刻も早く会社を去れ>

 いきなりこれだ。成毛眞『定年まで待つな!』はもはや未来のない日本の現状を踏まえ、40代、50代のミドルエイジに来たるべき老後の迎え方を説いた本。

 現在の40代が高齢者になる頃には年金の給付額は激減し、社会保障制度は崩壊し、医療や介護の自己負担率は上がり、<老後に潤沢な資金をもっていなければ、リアルに野垂れ死ぬ>。そうならないためにいまから手を打て、それが本書のコンセプトである。

<いまの会社をとっとと辞めて、長い間、稼ぎ続けられる職場を見つけ出す>のが、とにもかくにも第一歩。といっても、いまから資格取得を目指すのは無駄である。著者が勧める転職先のひとつは地方、もうひとつは海外だ。

 地方都市なら<おすすめは、経営者が年老いていて、若い後継者どころか、中堅社員がほとんどいないような会社>である。廃業する中小企業の5割は黒字なのに後継者がいないために潰れている。そういう会社は経験豊富なミドルエイジを喉から手が出るほど欲しがっている。たとえば温泉旅館、造り酒屋、あるいは食品メーカー。ダイヤの原石みたいな老舗の立て直しに成功すれば、シンデレラストーリーも夢ではない。

 海外ならば、狙い目はインドネシア、タイ、マレーシア、ベトナムなど、東南アジアの新興国だ。日本は他国より優れていると思うのは大間違い。経済成長著しい新興国には多様な転職先がある。<語学は後回しでいい。さっさと海外で働いてしまえ>

 副題は「一生稼げる逆転のキャリア戦略」。ま、東京の大企業に勤める人のための本ではある(いますぐ野垂れ死にしそうな人はどうすんだ?)。とはいえ、しょぼくれた話題ばかりが先行する昨今、妙に元気づけられるのも事実である。逆転の発想が必要なことだけはよくわかった。<持ち家はいますぐ売ってしまえ>は至言かもしれないな。持ち家は資産どころかむしろ負債だ。だよね。いまや日本は空き家大国だもんね。

週刊朝日  2018年11月30日号