最終決戦の3組は接戦が予想されたが、ウエストランドが6票、さや香が1票、ロングコートダディが0票だった。惜しくも優勝には届かなかったが、正統派漫才で衝撃を与えたのが、結成8年目のさや香だった。ファーストステージの「免許返納」では、石井がツッコミ、新山がボケのスタイルが途中で入れ替わり、絶妙の間で掛け合いが繰り広げられる。完成度の高い漫才に、審査員たちが心を奪われた。ダウンタウン・松本人志は「我々がこうツッコんでほしいと思っていることと、ボリュームも内容もシンクロしているツッコミのうまさ。気持ちよかったし、美しい漫才」と高く評価。サンドウィッチマン・富澤たけしが「王道でここまで爆発したら完璧だと思った」、博多大吉も「とんでもない漫才を見た気がします」と称賛した。M-1史上2番目のハイスコアとなる667点で1位通過。最終決戦では準優勝に終わったが、SNS上では「1本目のネタはM1の歴史に残る最高の漫才」と絶賛の声が殺到した。
元々は石井がボケ、新山がツッコミで5年前のM-1決勝に進出しているが、コンビの役割を今年に入って変えたことでさらに進化している。漫才だけでなく歌ネタなどコントも行い、平場でのトーク能力も高い。
民放テレビ関係者は「関西ではテレビのレギュラーを何本も抱えている実力派コンビです。面白い上に、ルックスが良くてスター性が抜群。人気が全国区になるのは時間の問題でしょう」と予測する。
M―1で惜しくも優勝を逃したが、その後に大ブレークした芸人は少なくない。08年準優勝のオードリー、16年から3年連続準優勝の和牛、19年準優勝のかまいたちはその代表格だ。もちろん、来年のM―1でさや香が頂点に立つことを期待しているファンは多い。正統派漫才でチャンピオンに立ったコンビは近年出ていないだけに、優勝候補の大本命になりそうだ。(今川秀悟)