従って、もし、あなたが、何年かの努力を経て、現在の仕事に熟達し、周囲からもそれなりの評価を受けながら、心の奥深くで、「自分の可能性は、これがすべてなのだろうか」「自分は、もっと飛躍していけるのではないか」と感じているならば、最新刊『なぜ、優秀な人ほど成長が止まるのか』で語っておいた「私淑の技法」を始めとする「成長の技法」を実践されることを勧めます。
自分の中に眠る「大きな可能性」に気がつき、それを開花させることができるでしょう。
逆に、もし、あなたが、現在の仕事に熟達できず、周囲からの評価が低いと感じているならば、同書で述べた「心理推察の技法」を始めとする「成長の技法」を実践することによって、必ず、仕事に熟達するための様々な「職業的能力」を身につけることができるでしょう。
●いつまでも過去の「肩書」にしがみつく人
では、第3の「立場」という落し穴とは何か。
ここで述べる「立場」とは、「役職」や「肩書」、「地位」や「身分」など「社会的な立場」のことです。
すなわち、それは、
過去の自分の「立場」に縛られ、新たな「立場」に合わせて自分を変えられない
という落し穴です。
その象徴的な例が、一つの企業や組織に永年勤め、それなりの実績も挙げ、周囲からの評価も得てきたにもかかわらず、定年を迎えてしまった瞬間に「終わってしまう」人です。
実際、それまでの企業や組織では、「優秀なマネジャー」「優秀なリーダー」との評価を得ながら、定年を迎えて、その企業や組織を離れ、新たな職場で働き始めたとき、その新たな立場で、それまでのように活躍することができなくなるという人は、決して少なくありません。
こうした例として、しばしば挙げられるのが、大企業を退職して、新たにNPOなどで働き始めた人です。こうした人の中には、NPOに移っても、自分が「管理職」であった時代の習慣が抜けきらず、自分より年下のメンバーに対して、部下のように「指図」をしてしまう人がいます。実は、これは、昔の習慣が抜けないというよりも、新たな立場に合わせて自分の意識を変えられないという問題に直面しているのです。
また、こうした「雇用定年」でなくとも、その企業や組織で「管理職」の立場を離れる「役職定年」になった瞬間に「終わってしまう」人もいます。
それまで、「管理職」という立場にあり、部下を持っていたときには活躍できたにもかかわらず、その立場が変わった瞬間に、新たな自分の立場に適応できないという人です。