●山の「中腹」を「頂上」だと勘違いしてしまう人
では、第2の「実績」という落し穴とは何か。
それは、プロフェッショナルとしての成長を「山登り」に譬えるならば、山の「中腹」を「頂上」であると勘違いしてしまうという落し穴です。
言葉を換えれば、仕事の世界において、いわゆる「井の中の蛙」や「お山の大将」になってしまう人です。
そして、これもまた、優秀な人ほど陥りがちな落し穴です。
なぜなら、ある程度の優秀さを持っている人ならば、どのような職場でも、どのような職業でも、10年も、真面目に一つの仕事に取り組んでいると、自然に仕事を覚え、「実績」を残し、周りからも頼りにされるようになり、「自分は、それなりに仕事はできる」と思うようになるからです。
そして、ここに落し穴があります。
なぜなら、我々が、よほど謙虚な心の姿勢を身につけていないかぎり、優秀な人であれば、あるほど、その「自分は、それなりに実績を残してきた」「自分は、それなりに仕事はできる」という心境は、心の奥深くに「無意識の慢心」を生んでいくからです。
そして、まさに、この「無意識の慢心」が、我々の成長を止めてしまうのです。
プロフェッショナルの世界には、昔から、怖い言葉があります。
「下段者、上段者の力が分からない」
その言葉です。
これは、プロフェッショナルの世界では、自分よりも優れたプロフェッショナルについては、そのプロが、どのような世界で、どのような技を発揮し、どのような力を発揮しているのかが分からない、という意味の格言です。
すなわち、仕事の世界には、必ず、「もっと高い能力が求められる仕事」「もっと広い視野が求められる仕事」「もっと深い視点が求められる仕事」があるのですが、そのことに気がつかないため、これまでの「実績」に満足し、「現在の自分」に安住してしまい、成長が止まってしまうのです。
言葉を換えれば、いわゆる、「小成に安んじてしまう」のです。
このように、「実績」という落し穴もまた、優秀な人ほど陥りやすいと言えます。