「影の日本史に迫りたい」と思ってきた歴史家と、「詩歌は諜報と深く結びついている」と考える作家の対談集。
西行は鳥羽上皇直属のエリート武士で、かつ容姿端麗にして、弓術、馬術にすぐれ、和歌の心得があった。そんな「今でいうとサッカーの日本代表とジャニーズ系を兼ねた」人物がなぜ出家したか。磯田は「時代が暴力の日常化に向かっていくなかで、人に奉仕する、神仏に奉仕するほうに」魅力を感じるようになったからではという。
連歌を普及させた宗祇は、後半生旅ばかりした。なにか伝言があれば連歌師が非公式に伝えた。それを受けて嵐山は「室町時代の公安調査官ですね」。さらに戦場に連れていかれる連歌師は、「戦争広告人」かつ「従軍記者」でもあったのだ。うんちくと想像が楽しく、頁をめくる手が止まらない。
※週刊朝日 2018年10月19日号