生れたばかりの赤ちゃんを抱いたパパ、ママの顔は喜びに輝いています。「元気で生まれてきてくれて、ありがとう」と感謝して、幸せな人生を歩んで欲しいと心から祈ったことでしょう。
 でも、子育てが始まると思い通りにならないことばかり。つい感情的になって叱ってしまい、涙の跡が残る幼い寝顔に「ごめんね」と声をかけることはありませんか?
 「子どもがしあわせなら......それだけで みんな、しあわせ」(本書より)
 慶應義塾大学医学部小児科の高橋孝雄教授による本書『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』は、こんな言葉で始まります。
 小児科医として36年間、病気と闘うさまざまな年齢の子どもたちと向き合ってきた高橋先生による"育児書"は、先生の人柄がにじみでるやさしい視線でまとめられたシンプルな文章で、育児に悩むおとうさん、おかあさんの心にすっと響いてくる分かりやすい内容も秀逸です。
 胎教、早期教育、食育などなど。巷にあふれる情報は、育児をがんばる現代の親たちを悩ませています。働くおかあさんは忙しくてかまってあげられないと罪悪感にさいなまれ、"理想の親"になれない自分の姿に自信を無くしている人もいるようです。
 そんな親たちに対して、「『理想の母』を追い求めないで。子どもが好きなのは、いまのおかあさん。」(本書より)と先生は言い、親が子どもを気づかう愛情は必ず子どもに伝わることを教えてくれます。
 子どもの個性や能力は親から受け継いるけれど、環境や努力によって変えられることがある一方、絶対に変わらないこともあるそうです。でも両親からもらった遺伝子に守られて、子どもは育つそう。小さく生まれても、たとえ病気や障害があったとしても「生れてきてくれただけで『合格』なのです」と高橋先生。
 人間が幸せに生きて行くために必要な能力を「共感力」、「意思決定力」、「自己肯定感」とし、その能力を育むために親はどうあるべきかについても、具体的なアドバイスが盛り込まれた本書は、子どもの幸せを願う親が取るべき道を示してくれます。
 長く手元に置いて、何度も読み返す、そんな子育てのバイブルになりそうです。