AERA2022年12月26日号より
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 コロナ禍に加え円安に物価高と、苦しい生活を強いられている日本国民。単身者や子育て世帯だけでなく、仕入れコストが上がる企業にも影響が及んでいる。AERA2022年12月26日号の記事を紹介する。

【写真】アルバイトを二つ掛け持ちし、会社を継続させようと頑張る社長

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 コロナ、円安、物価高──。この「三重苦」は中小企業も苦しめる。帝国データバンクによれば、物価高で倒産した企業は11月に46件となり、過去最多を5カ月連続で更新した。今年1月が6件だったので、実に8倍近く増えている。

「とにかく生き残ろうと思っています」

 東京都台東区。中小企業が集まるこの町で、05年から靴卸業「アバンス」を経営する社長の田島良則さん(62)は言う。

 同社は、主に中国で製造された男性用ビジネスシューズを輸入し、社名と同じ自社ブランドで大手スーパーなどに卸している。最盛期には社員が13人いて、6億円近い売り上げがあった。

 だが、コロナ禍で一変した。20年の春頃から冠婚葬祭や卒業式、入学式などイベント行事がなくなりテレワークも進み、ビジネスシューズを履く機会が一気に減った。

 そこに襲いかかってきたのが円安と物価高の波だ。

 例えば、中国から靴を1足20ドルで輸入する場合、1ドル=100円であれば支払いは2千円だが、1ドル=150円になると支払いは3千円になる。しかし、仕入れコストの上昇を価格に転嫁することは、客離れにつながるのでできない。

 会社の売り上げはみるみる落ちていき、経営は厳しくなった。従業員は、今では田島さんを含め3人だ。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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