eumoが掲げる「共感資本社会の実現」という壮大な目標に挑む新井は今、「楽しくて仕方ない」と言う(撮影/東川哲也)
eumoが掲げる「共感資本社会の実現」という壮大な目標に挑む新井は今、「楽しくて仕方ない」と言う(撮影/東川哲也)
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 eumo代表取締役、新井和宏。北海道のニセコ町で使える地域通貨「NISEKO eumo」。新井和宏はこれ以外にもいくつもの地域通貨の立ち上げにかかわってきた。使える期間を設け、貯められない。失効したeumoは地域課題や子どものために使われる。共感を表現する地域通貨だという。かつては資産運用会社で働き、年収も高かった。そこに疑問を持った。富める人のためでない、新しい金融を作ろうとしている。

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 お金とは何か──。新井和宏(あらいかずひろ)(54)は、この壮大で、解答のない宿題の答えを求め続けてきた。

 新井が代表を務めるeumo(ユーモ)は様々な地域通貨を導入できるシステムを提供している。eumoの語源はユーダイモニア(Eudaimonia)、ギリシャ語で「持続的幸福」を意味する。

 新井が東京から移り住んだ北海道ニセコ町では、2022年からNISEKO eumoが本格的に導入された。町長の片山健也はたまたま上京していた日に、知人に誘われてeumoの設立パーティーに参加し、新井と出会った。18年のことだ。

 約100年前に作家の有島武郎が町内に所有していた農地を解放し、お互いを尊重し助け合う「相互扶助」の思想を広めた地でもあるニセコ町。片山はこの理念を現代のSDGs社会に合うように変換した「共感資本社会」を基軸とした街づくりを目指している。

 当初、片山は地域通貨には懐疑的だった。従来の設計では、加盟店がより「売るため」のインセンティブにしかなっていないと感じていたからだ。

 地域通貨は2000年代から何度かブームを迎え廃れてきた。専修大学経済学部教授の泉留維(いずみるい)の研究によると、19年12月までに立ち上げられた地域通貨は650にのぼるが、この時点で稼働しているのは189。3年以内に約6割が休止、10年以上稼働しているものは15%に過ぎないという。

 新井はこれまで長野県松本市のALPSCITY pay(アルプスシティ ペイ)や兵庫県豊岡市の豊岡演劇祭応援コインなど10もの地域通貨の立ち上げにかかわってきたが、大事なのは「コミュニティーを活性化させたいという思いを持った人の存在」だという。

 パーティーで新井の話を聞いた片山は確信した。

「eumoなら、目指したい社会を一緒につくれると思いました。それは新井さんが人の尊厳や生き方を尊重する金融を目指しているからです」

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