ある本を読むきっかけが友人からの勧めだった、という経験は誰しもあることと思う。友人がその本のどこに惹かれたのかを考えながら読むのは楽しいものだが、本書もまたそんな楽しみを提供してくれる。本を紹介するラジオ番組「BOOK BAR」の10年間の放送から50冊分を書き起こした。

 女優の杏さんと大倉眞一郎氏がそれぞれ持ち寄った本を紹介し合うシンプルな内容だが、2人のやりとりの妙で、本の書かれた背景や著者の人となりまでがするりと頭に入ってくる。扱う本は純文学から漫画まで多岐にわたるが、軽やかな語りに誘われてページを繰るごとにどれも読みたくなってしまうから不思議だ。杏さんの歴史好きは有名だが、選書にも語りにもそれが反映されていて、そこも見どころである。

週刊朝日  2018年6月1日号