6)「既存のセオリー」への懐疑

 投球の組み立ても興味深い論点だ。日本では長らく元プロ野球監督の野村克也氏が強調する投球セオリーが重用されてきた。「バッターから一番遠く、長打を浴びる可能性が一番少ない外角低めのストレート」を基本とし、これを中心にカーブやスライダーなどの変化球を織り交ぜるというものだ。

 ところが、ダルビッシュの投球はそうなっているだろうか? 投球もスライダー中心の組み立てになっている。従来の野村監督の言うセオリー通りではないように見えるのだ。同様に1番は足が速く、2番はバントがうまく、4番が長距離打者で…といった旧来からの攻撃のセオリーも、本当に正しいかどうかは「 ? 」 であることは、映画「マネーボール」で描かれた通りだ。過去の偉い人が言うことは尊重してもよいが、盲目的に信じてはいけない。

 仕事のしかたでも、会社にある「黄金法則」のようなものを鵜呑みにするのではなく、今もそのセオリーが機能しているのか、自分にはそのセオリーが向いているのかを疑うことも必要だ。そういうこともダルビッシュの投球から学べる。

7)得意分野が違う逸材の「シナジー」

 ダルビッシュの妻は元レスリングのトップ選手。ダルビッシュ夫妻はスポーツ界のサラブレット同士が結婚した形だ。

 さて、サラブレッド通しのご子息、ご令嬢はスポーツ能力が高いのだろうか? 野球のピッチャーの場合、瞬間的に大きな力を出せる瞬発性に優れた筋肉(速筋)が発達しているだろう。レスリングの場合は、瞬発力も重要だが、持久力も重要なので、遅筋も発達すると思われる。これらの能力が掛け合わされるとすごいことになるのか、あるいは長所を消しあってしまうのだろうか? そういえば、陸上400メートルリレーとシンクロナイズドスイミングのメダリスト同士の子供はどうなるだろう、などと話は膨らむ。

 あるいは、すごい父と母を持った子どもはどう育つのか、あるいはどんなメンタリティを持つのかといった話の展開も予想される。そして、芸能人の父母を持つ2世タレントは果たして成功しているか、成功した2世とうまくいかない圧倒的多数の2世タレントは何が違うのか、といった話にも派生するだろう。

 ここから、例えば会社での人材活用を考えた時に、エライ人の子供さんはどう活用すべきか、どのようなタイプの優秀な人を組み合わせればチームの力を最大化できるだろうか、などと思いを馳せることもできるだろう。

 と、まあこのように、ダルビッシュをテーマとした雑談ひとつとっても、話題は多岐に広がる。あるトピックを元に持論を敷衍したり、発展させて考えることで、自分のビジネスや、プロジェクトに活かせるヒントは得られる。優秀な人は雑談をそうして活かしている。

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雑談は自分をアピールする機会にもなる