話題の子パンダ、シャンシャンの一般公開が始まった。本書はパンダについてのエッセイ集。「黒柳徹子・選」とあったら手に取らないわけにはいかない。

 読み始めた時には雑多な印象を受けたのだが、次第にこの本の面白さに気づいた。それは、筆者たちがそれぞれのパンダ愛を語るという一点で貫かれているということだ。浅田次郎氏の、パンダ見物がしたいのに周囲に言い出せない話には笑ってしまったし、飼育員たちのパンダ飼育奮闘記はどれも感動的で、彼らの努力に敬服した。異彩を放っていたのは、パンダの死体を解剖して「第七の指」の役割を発見した遠藤秀紀氏のエッセイ。「物言わぬからだは、分け隔てなく話し相手だ」という氏の言葉は、「あたし」という一人称と響き合い、動物への深い慈しみを湛えていた。

週刊朝日  2018年3月2日号