2018年の箱根駅伝で4連覇を果たした青山学院大学。『勝ち続ける理由』は、青学大陸上部の原晋監督が2連覇達成後の16年12月に出版した本である。

『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』という著書もあるように、原監督が元「伝説の営業マン」だったのは有名な話。監督に就任したのは04年。09年には33年ぶりに箱根駅伝に出場するも結果は最下位。15年に初優勝した際にはみんながあっと驚いたけど、監督にとっては想定内。2連覇達成の理由についても、だから彼はシレッというのだ。

〈まず指摘したいのが、私が監督に就任してから12年目の出来事だということだ。この11年余りの年月を費やして培ってきた組織の力が発揮されたのである〉

 ううむ、継続は力ということか。箱根での連覇を達成するまでの12年余で、組織の進化には四つの段階があったという。ステージ1は監督が部員に知識や技術を細かく教え込む段階で、就任3年目まではこれだった。ステージ2は監督が学年長(選手が自主的に選んだ学年のリーダー)に指示し、学年長から部員に指示が伝えられる段階。ステージ3では監督は方向性を与えるだけで選手が自主的に考えて行動するようになり、組織が成熟したステージ4では監督はサポーター的な役割に回り、コーチングが威力を発揮する。

 ひるがえって現在の陸上界は旧態依然。〈いまだにステージ1の段階に止まっているのだ〉と監督はいう。躾にはじまり、監督やコーチへの口答えは許されず、ときに体罰。選手の自主性は奪われ、根性論や精神論が叩き込まれる。特に長距離走は「練習中に笑うな」「しゃべるな」「地味な服を着ろ」と、まるで修行僧。

 だからこそ原監督は真逆のチャラさを強調する。「ハッピー大作戦」「ハーモニー大作戦」などの命名もその一環。〈現在の大義はと言えば、箱根駅伝での3連覇や4連覇という発想ではなく、陸上界を華やかな世界にすることである〉と語る監督の面目躍如だね。

週刊朝日  2018年1月26日号