日清戦争(1894~95年)を完勝に導いた川上操六・陸軍参謀総長(1848~99)を中心に、明治日本のインテリジェンス(諜報活動)について考えた作品。川上はドイツ陸軍のモルトケ参謀総長に約1年半、戦略、戦術を学んだ。帰国後、藩閥にこだわらず人材を集め、部下に明石元二郎、福島安正などがいる。日清戦争で総指揮を執った川上は清国有利の前評判を覆した。命令に従わない先輩・山県有朋の解任に動くなど、強気のリーダーシップを発揮した。戦後の三国干渉では師匠ドイツに一杯食わされたものの、くじけず日露戦争に向けて布石を打っていた。50歳で急死している。
著者は元毎日新聞記者。「昭和前期まで川上が生きておれば、激怒して即刻首にしたであろう無能な参謀総長が連続したことで、日本は滅んだのである」と書く。
※週刊朝日 2018年1月19日号