「当初は関東版のみの販売を行っておりましたが、かけ湯文化のある関西地方からのご要望により、しばらくしてから関西版を販売開始したと伝え聞いております」
湯船から湯を汲むという洗い方をする関西人にとっては、関東版ケロリン桶では重くて使いにくかったのでしょう。
ちなみに関西版は大阪や京都、兵庫の一部の銭湯のみで使われている少数派。そのほか全国9割近くが関東版なんです。一般に販売されているケロリン桶は地域差が無く、関東版が主に売られていますが、関西版も併売されていることが多いとのこと。
■背景画は「富士山」だけじゃなかった
映画『テルマエ・ロマエ』の撮影場所になった稲荷湯(東京都北区)は大正時代創業という歴史ある銭湯。浴室でまず目が行くのは存在感抜群な富士山のペンキ絵です。稲荷湯では毎年絵が描き換えられますが、必ず描かれるのが富士山。このように東京銭湯ペンキ絵は富士山が多いというのもの特徴です。

全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会 事務局の鈴木忍さん(42)によると、東京の千代田区にあったキカイ湯という銭湯が大正元年に増築する際、「風呂嫌いの子どもが喜んで風呂に入るように」と絵を描いたのが評判になって広まったのだとか。富士山が多いのは、絵を描いたのが静岡出身の画家であった事や、日本の象徴的な存在であり、末広がりで縁起も良いからという理由も。
一方、大阪で多く見られるのがタイル絵。持ちが良いのと高級感があるという点が大阪でタイル絵が広まった要因のようです。

また東京で多く見られる絵は富士山ですが、大阪ではモチーフが多彩で、東西の名所や花鳥風月、中には近隣の風景を描く物もあります。大阪では富士山は眺めることができないことから、特化することが無かったと考えられています。
■関西の屋号にしゃれっ気

関東では 「◯◯湯」という屋号が多いですが、大阪公衆浴場組合のホームページを見ると「◯◯温泉」という屋号が目立ちます。

再び大阪府公衆浴場組合の藤本さんに尋ねると、「銭湯を“温泉”と呼ぶことを奇異に感じない大阪の店主や客のしゃれっ気からでしょうね」という答えが。