河合薫『他人をバカにしたがる男たち』。要は「老害論」である。

 日本企業は優秀な人材を集め、イノベーションを起こしたいと考えている。が、その願いはかなわない。「ジジイの壁」があるから。それが著者の主張である。

「ジジイ」とは「自己保身」に長け、組織内で得た権力を「自分のため」に使う人。「ジジイ的なる人」には女性も含まれるとした上で示される「ジジイの習性」は「いるよいるよ、そういう人」と思わせるものばかりである。

「責任とれるわけ?」「アイツは組織がわかっていない」などといって、仕事ができる社員をつぶす。人を肩書や属性で判断する。コンビニやタクシーの中で高圧的になる。社内で残念な人なのに、社外では偉そうに振る舞う。

 エリートほどじつは「ジジイ」になりやすいという。〈彼らは手にした属性にすがり、集団の名声=自分の価値、役職の価値=自分の価値と勘違いし続けている〉からだ。部下をバカにし、若者をバカにし、女をバカにする。〈〝ジジイたちの壁〟は厚い。ベルリンの壁よりも厚い〉。まったくね。

 私もずっと怒ってましたよ、ジジイの壁に。しかし、年を重ねると、自分がそっち側かもという恐怖がわく。本書に登場する「老害度チェック」は以下の通り。

(1)つい若い世代の仕事のやり方に口を出す。(2)つい自分の体験談や自慢話をする。(3)昔の部下や後輩相手に命令口調で話す。(4)若手にできないことが自分にはできると思う。(5)デジタル技術に疎く、資料作成を人に頼む。(6)電話をとるのは若手の仕事。自分がとると横柄になる。(7)定年後も働く理由について「家にいると嫌がられる」などのネガティブな発言をする。(8)「給料が半分になったから仕事も半分」などと、やる気を疑われる発言をする。(9)人の話を聞かなくなったといわれる。(10)与えられる仕事のより好みをする。

 6個以上○がついたら立派な老害、3個以上なら老害候補だそう。カタカナ多めのビジネス書だけど、自分を振り返るにはいいかも。私もちょっとヤバイです。

週刊朝日  2017年9月22日号