民進党の代表選を横目で見ながら、なんとなくウンザリしているあなた(や私)。政治を変えなきゃどうしようもないとは思っていても、いまの野党では……ねえ。

 こんなときには、やや引いた視点から考えるのがいいかもしれない。國分功一郎+山崎亮『僕らの社会主義』は、哲学者とまちづくりのプロが来たるべき未来像について語り合った対談だ。社会主義が失敗の烙印を押されたいま、なぜ社会主義?と一瞬思うけれども、格差が広がり、労働に希望が持てない現在の社会は〈イギリスの初期社会主義を生み出したあの一九世紀に似てきているのではなかろうか〉が二人の共通認識。彼らがいう「社会主義」とはソ連型のそれではなく、19世紀に誕生した多様な社会改革運動を指す。

 たとえば詩人でデザイナーだったウィリアム・モリスは、革命後の世界には「装飾」が必要だと説いた。建築物や衣服の装飾は人々の目を楽しませ、職人たちは装飾で手仕事の楽しさを得る。それが産業革命以降は失われてしまった。仕事が楽しくなければ、社会がよくなるはずもない。〈モリスの思想はユートピア社会主義であるとして糾弾されたわけですが、我々は現代のテクノロジー・環境と照らし合わせたうえでその思想を実現できるよう努力していけばいい。一九世紀イギリスの思想は現代を生きる我々に、非常に大きなヒントを与えてくれているような気がするんです〉(山崎)

 昨年の米大統領選でのバーニー・サンダースや、イギリス労働党の党首になったジェレミー・コービンの人気を思えば、人々が何を求めているか見えてくる。

 イギリスでは、地域政党が躍進した。〈現在の資本主義の状況下では、国家単位で考えると一番邪魔なのが国民です。(略)でも、地域単位で考えると違ってくる。実際にそこにいる住民のために何ができるかということが政策課題に入ってくる〉(國分)

 いうならばマイルド・ソーシャリズムの可能性。少しだけ希望が湧く本。目先の政治も大切だけど、もう少し先を考えないとね。

週刊朝日  2017年9月8日号