「人口減少」という暗雲が日本の将来に大きな深い影を落としている。2008年から始まった日本の人口減少は、年を追うごとにその減少の幅が拡大して、さらに急ピッチで加速している。すでに、公立の小中高校の廃校が毎年500校を超えるペースで10年以上続いている。それでもまだ、人口減少の入り口に立ったにすぎない。

 本格的な人口激減はこれから始まる。この「静かな大津波」は人為的なコントロールが極めて難しく、しかもすべてを飲み込んでゆく。2065年には人口が8808万になってしまい、しかも高齢者の割合が増えて働く人が少なくなってゆく。その大波は、大都市圏を除いて多くの地域を「限界集落」化し、ゴーストタウンへと変えてゆく。

 従来の対策では減少は止められない。働ける人を増やすには、外国人を受け入れる以外に方法がない。巷では「移民反対!」の意見が根強く、政府も「移民政策と誤解されないよう」に「高度人材」の受け入れに門戸を開く姿勢をみせたほかは、最も人手不足が深刻なサービス業や製造現場への外国人の受け入れには、慎重な姿勢を崩していない。

 ところで外国人は、それほど嫌われる怖い人たちなのだろうか? 筆者の関わる国際交流関係者の間でよくいわれる「土(つち)人間」と「風(かぜ)人間」という話がある。
 土人間とは地域に土着する人たちで、その社会は「以心伝心」で話が通じ、もめごとも起こりにくく、平穏で波風が立つことも少ない。しかし、土人間ばかりの社会はやがて息苦しくなって、活力を失っていくことになる。

 一方、風人間は土地を渡り歩く人たちだ。土人間ばかりの社会に風人間がやってくると、誤解や衝突から社会に混乱も起こる。しかし、この葛藤の中から新しい知識や発想が生まれて、やがて共存の知恵や未知のエネルギーが社会を前進させていく。

 その交わりによって、多面性ある豊かな「風土」となっていくところに、まさに国際交流の目ざす姿がある。海外から風人間を招いて土人間と引き合わせ、異文化をテコに地域や国を世界に開かれた活力ある社会へと導く立場だ。

次のページ