人間の核心をついていると思った映画は、ドラマ化も進行中の「ガタカ」。遺伝子操作された人間と自然に生まれた人間とがいる世界を描いた一見SFチックな話だけど、自然に生まれた人間がバレないように必死に生きる姿を見ていると、自分自身もそういう感覚になるときが多々あるなと思う。僕の職場でいうと、優秀な芸人がたくさんいて、さらっと爆笑をかっさらっているように見える。自分だけ必死こいているってバレたくないから、同じような顔をして収録に臨んでいる……みたいな。
■夢をつかむ姿に感涙
最近の映画だと「テトリス」もすっごい面白かった。アメリカのゲーム会社や任天堂が争奪戦を繰り広げたり、癒着や利権でぐちゃぐちゃしているのに、全部実名。8ビットの映像や当時流行っていた音楽も組み合わさっていて、良作でしたね。
人生で一番見た映画は「ロッキー」で、いまだに自分を奮い立たせてくれます。売れない役者だったシルヴェスター・スタローンが自分で脚本を書いて、主演も演じた。名も無いボクサーが夢をつかむ話は、経済不況の時代背景もあいまって、アメリカンドリームだってみんなが夢中になった。それをふまえてのクライマックスの音楽。何回見たかわからないし、何回泣いたかもわからない。しかも、なんかよくわからない涙なんです。
「ロッキー」なんてベタに思われるかもしれないけど、若い方と話すと知らない人も多いんですよ。いつの間にか古典みたいになっちゃって。全身で感じられる話だから、じっくり見てほしい。絶対熱くなれますから。
(構成/編集部・福井しほ)
■じっくり味わい、自分の血肉に
本
○パーソナリティーを垣間見られる
『強く生きていくためにあなたに伝えたいこと』/野々村友紀子/産業編集センター
『寄生虫館物語 可愛く奇妙な虫たちの暮らし』/亀谷了/文春文庫PLUS
『無言館 戦没画学生たちの青春』/窪島誠一郎/河出文庫
映画
○何回も見て何回も泣いた
「ロッキー」/ジョン・G・アビルドセン(1976年)/U-NEXTで配信中
「ガタカ」/アンドリュー・ニコル(1997年)
「テトリス」/ジョン・S・ベアード(2023年/Apple TV+)
※AERA 2023年5月1-8日合併号