劇団ひとり(げきだん・ひとり)/1977年生まれ。芸人。監督・脚本を務めたNetflix映画「浅草キッド」がアジアン・アカデミー・クリエイティブ・アワードで最優秀作品賞を受賞。近著に『浅草ルンタッタ』
劇団ひとり(げきだん・ひとり)/1977年生まれ。芸人。監督・脚本を務めたNetflix映画「浅草キッド」がアジアン・アカデミー・クリエイティブ・アワードで最優秀作品賞を受賞。近著に『浅草ルンタッタ』
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 楽しいときも落ち込んでいるときも、本と映画は私たちの心にいつでも寄り添ってくれる。“コストパフォーマンス”や“タイムパフォーマンス”のような尺度では測れない。芸人・劇団ひとりさんが、「人生を豊かにする」タイトルを語ってくれた。AERA 2023年5月1-8日合併号の記事を紹介する。

【劇団ひとりさんが紹介する「人生を豊かにする」作品はこちら】

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 映画を倍速で見るファスト文化みたいなものは、実はあまり合理的でないんじゃないかなって気がします。せっかく読んだり見たりするんだったら、ちょっとでも人生のプラスにしたいじゃないですか。腰を据えてじっくり読んで、気に入ったフレーズは何回も復唱して、自分の血と肉にしたいですよね。

 東京・目黒にある目黒寄生虫館を作った亀谷了(かめがいさとる)さんの『寄生虫館物語』も何度も読んだ本の一つ。寄生虫って気持ち悪いイメージがありますが、ニッチな進化をしてきたんです。好きな寄生虫がいて、そいつはヒツジに寄生したいけど、あまりに小さいから相手にされない。それで、カタツムリにまず寄生する。排出された粘球をアリが食べて、そのアリをヒツジが草と一緒に食べる。そこでやっと寄生できるんです。どの寄生虫の生態も想像を絶するというか、ロマンチックなところもあったり、すごくおもしろいんです。

 読書の醍醐味といえば、作者のパーソナリティーを垣間見られること。野々村友紀子さんの『強く生きていくために あなたに伝えたいこと』はまさにそんな一冊です。自分の子どもに託したい言葉を書いた本で、かなり具体的です。野々村さんの生き方とか大事にしているものが短い言葉の中に集約されている。なかでも好きだったのは、「好きな人に頼まれても変な写真は撮るな」というもの。このフォーマットでいろんな人の伝えたい言葉を読んでみたいですね。

 40年以上生きてきたなかで、自分の考えがまったく及んでいなかったと痛感したのが、『無言館 戦没画学生たちの青春』です。無言館は戦争で亡くなった学生の絵を展示する美術館で、本には遺族や関係者のやりとりも描かれています。読み進めるうちに、自分は文字面でしか戦争を捉えられていなかったんだと気づきました。

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