●リスクを取らなければリターンはない
リスクとどう向き合うか――。
これは、人生を決めるきわめて重要なポイントです。私は決して、ハイリスクを取ることをすすめているわけではありません。ローリスクであってもかまわない。ハイリスクを取らなければハイリターンを望むことはできませんが、ローリスクであってもローリターンは得られる。リスクを取れば必ずリターンはあるのです。逆に言えば、リスクを取らなければ、決してリターンは得られないということです。
だから、私は、リスクを避けるように生きるのは間違いだと思っています。リスクとは避けるべきものではなく、自分が取れるリスクをしっかりと見極めたうえで、許容できる範囲内で積極的に取りに行くべきものなのです。
こう言うと、必ず「失敗したらどうするのか?」という反論があります。
でも、私は「失敗してもいい」と思います。もちろん、「無謀なリスク」を取って失敗するのは危険すぎます。リスクを衝動的に取るようなことをしてはいけない。あらゆる角度から勝算を見極めたうえで、最悪の事態を招いても命までは取られない範囲でリスクを取るのが絶対条件です。しかし、そのうえでチャレンジをした結果、失敗するのは決して悪いことではありません。なぜなら、リスクを取ることで、人間は必ず成長するからです。たとえ失敗したとしても、リスクを取れば必ず成長という対価を得ることができるのです。
私は、人間の成長には方程式があると考えています。
「リスク」×「時間」×「努力」=「成長」という方程式です。リスクと努力には相関関係があります。人間はリスクがあると思うから、安全地帯にいないという自覚があるからこそ、必死になります。いやが上にも人一倍努力をするようになるのです。だから、リスクは大きければ大きいほど、成長のレバレッジは強くきくわけです。
しかし、逆に、リスクを取らずにいれば、本人は努力をしているつもりであったとしても、たかが知れています。そのまま、10年、20年と時間が過ぎるうちに、リスクを取る人との差はかけ離れたものになる。リスクを取らなければ失敗確率は少なくなるでしょうが、成長角度が上がらない。リスクを取った人との間に大きな実力差が生じるのです。
そもそも、あらゆる選択にはリスクが伴います。
私がリスクを避けて日本にとどまる選択をすれば、マレーシアに移住するよりも苦労の少ない人生を送れたかもしれない。しかし、そのコインには裏側がある。つまり、私のような平凡な人間では、日本で事業家として何事かを成し遂げることはできなかった。そして、「あのとき、リスクを取っていれば」と後悔したはずです。リスクを避けようとしても、そこにはすでに別のリスクが存在している。私たちはどんな選択をしようとも、リスクとは無縁ではいられないのです。
であれば、リスクは積極的に取りに行くべきです。人生において何事かを成し遂げたいと思うならば、リスクを恐れてはならないのです。ローリスクでもいい。自分が取れる範囲のリスクを、自らの意志で取りに行く。リスクを取る者の前には、必ず人生が拓けていくのです。