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 わが家の愛犬「もも」(写真奥)の一番の親友、チエ(同手前)が死んだ。肺に血液がたまったとのことだった。

 捨て犬だったチエを近くに住む義弟一家が引き取ったのだが、チエはトラウマがあるのか極端に人間を怖がり、気を許せる犬も少ない子だった。

 現在、わが家のももが年女。チエはたぶんももより1、2歳上だっただろう。雌犬同士は仲が悪いと言うが、2匹はいつもじゃれ合って仲良くしていた。

 かつて、家内が門を開けたまま溝掃除をしていたとき、その隙にももが脱走したことがあった。

 車にはねられたらと真っ青になった家内が追いかけたが、見失ってしまう。どこを捜しても見つからず、憔悴していたとき、義弟のお嫁さんからメールが。「ももちゃん、家で預かっているよ」と。

 徒歩8分の義弟の家に、チエに会いに飛び出したのだ。以後、ももは庭の隙間からも脱走するようになり、私たちは庭に柵や網を設置して攻防戦を演じることとなる。
 ももには友だちがたくさんいるが、チエのような年上の犬が一匹、また一匹と死んで、いつの間にか、ももが一番の年上となってしまった。若犬の友だちもいるが、一緒に遊んだ時間と思い出の量が違う。

 私たち夫婦にとっても、いつも散歩しているところにいつも散歩させている方がいないのは寂しいものだ。

 チエが死ぬ前日、予感があったのか、私たちはももを連れて義弟の家で寝ているチエに会いに行った。チエは病に苦しんでいる様子もなく、ももをしっかりと見つめていた。ももはしっぽを振って遊ぼうと誘った。

 ももはチエの死をどう感じているのか。何も知らず、ももは脱走して、これからどこに行くのだろうか。

(本近敏彦さんさん 兵庫県/63歳/教師)

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