
Album “EAT A PEACH”

Album “SKYDOG; DUANE ALLMAN RETROSPECTIVE”
オールマン・ブラザーズ・バンドの2作目『アイドルワイルド・サウス』は1970年の春から夏にかけて録音されている。発売は、ドゥエインがデレク&ザ・ドミノスのレコーディング・セッションに参加した直後の、同年9月末。基本的にはデビュー作で確立した音楽性、方向性が踏襲されているのだが、じつはここで、バンド内に大きな変化が起きていた。ディッキー・ベッツの書いた曲が《リヴァイヴァル》、《イン・メモリー・オブ・エリザベス・リード》と2つも取り上げられ、1作目ではドゥエイン・オールマンのギター・パートナーという役割に徹していた彼がソングライターとしても、その存在感を強く打ち出すようになったのだ。
シンプルなメッセージの込められた前者はグレッグのリード・ヴォーカルでシングル・チャートでも中ヒットを記録。当時のライヴでは、オーディエンスも巻き込む形で歌われることが多かったようだ。一方、後者は、ジャズのエッセンスも大胆に取り込み、長尺のインストゥルメンタルに仕上げた、意欲的な作品。具体的には、マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』あたりを強く意識したものだという。よく知られた話かもしれないが、《エリザベス・リードの追憶》という邦題でも親しまれてきたこの曲の成り立ちを、ディッキー本人から確認したことも含めて、あらためて紹介しておこう。
オールマンズがジョージア州メイコンを拠点に本格的な創作活動をスタートさせたころ、長髪の若者たちが組んだ、しかもメンバーの一人が黒人のバンドは、まだまだ異端の存在だった。そういった事情もあり、陽が落ちると彼らはしばしば、街の中心部にあるローズヒル・セメタリーに向かい、新曲のアイディアを出しあったりしていたという。《イン・メモリー・オブ・エリザベス・リード》は、安ワインとマジック・マッシュルームからインスピレーションを与えられながらの、そういった墓地セッションのなかから生まれた曲。モデルの女性はいたらしいが、それは伏せ、たまたま近くにあった墓石から名前をいただくことにしたのだそうだ。
グレッグの《フウィッピング・ポスト》と《エリザベス・リード》を核にした連日のライヴで着実に評価を高めていった彼らは、1971年3月のコンサートをまとめた『アット・フィルモア・イースト』を同年7月に発表し、一気に知名度もアップさせていくことになる。しかし、10月にはドゥエインが24歳の若さで急逝。残された5人は、そこで歩みを止めることはせず、すでに録音されていた曲に新録音曲を加える構成の2枚組『イート・ア・ピーチ』を翌年2月に発表している。《ブルー・スカイ》はそのうちの1曲で、おそらく6人全員が顔を揃えた最後のスタジオ・セッションで録音されたものだろう(アンソロジー・セット『スカイドッグ』には、ドゥエインが亡くなる直前のライヴを記録したテイクが収められている)。
ジャズ色の強かった《エリザベス・リード》から一転して、《ブルー・スカイ》でのディッキーは彼の音楽的原点がカントリーやブルーグラスであったことを明確な形で表明している。そして、その狙いや想いをドゥエインがきっちりと受け止め、スタジオ版でいうと、1:00前後から4:10前後まで、約3分にわたって二人がそれぞれに個性的なソロと、そして、美しいツイン・リードを聞かせている。[次回4/12(水)更新予定]