
「平塚学園の2年生右腕・山口禅が最後に投じた球は阿部以外なら打ち取れたでしょう。内角高めの厳しい球でベストピッチだったと思います。あの緊張感の中で、結果を出す阿部の凄みを感じましたね。印象的だったのは試合後の姿です。打った瞬間は喜びを爆発させていましたが、他の選手が涙を流す中で、すぐに気持ちを切り替えて次の戦いを見据えていました。主将としてリーダーシップがあるだけでなく、肝が据わっている。精神的にも成熟した選手です」
「プロ志望届」導入まではサプライズ指名も
阿部は大学進学が報じられているが、ドラフト指名はされないのか。
かつては大学進学を希望していた高校生を、ドラフトで敢然と指名するケースがあったが、アマチュア側とトラブルになったこともあり、日本高校野球連盟が2004年に「プロ志望届」の制度を導入した(のちに日本大学野球連盟も導入)。高校生はドラフト会議の2週間前までにプロ野球志望届を提出しなければ、ドラフトで指名を受けられない。
大学進学、社会人野球入りを希望する場合はプロ志望届を出さないため、ドラフトでのサプライズ指名がなくなったが、異例のケースもあった。高橋宏斗(中日)は中京大中京で高校球界を代表する右腕として名を轟かせ、ドラフト1位候補と言われたが、慶大進学を希望していた。ところが、慶大入試で不合格となり、急きょ進路変更を決断。提出期限近くになってプロ志望届を提出した。すでに各球団がドラフト戦略を固めていた時期だったこともあり、地元球団の中日がドラフト1位で単独指名し、入団した。その後は球界を代表する右腕としてステップアップし、メジャーから熱視線を送られている。
「高橋宏斗は慶大に進学していたら今の姿はなかった。飛び抜けた能力を持つ逸材は高卒でプロ入団したほうがいいと思います。高卒でプロ入りを躊躇する考えも理解できますよ。ドラフト1位で入団した高卒ルーキーでも、活躍した選手は一握りの厳しい世界ですから。でも、大谷、ダルビッシュ有(パドレス)、山本由伸(ドジャース)、鈴木誠也(カブス)、岡本和真(巨人)、村上宗隆(ヤクルト)など、スーパースターには高卒入団の選手が多いことも事実です。どの進路が正解とは言えませんが、高卒で1位指名される評価の選手は稀有です。プロの世界に1日でも早く飛び込んでほしい思いはあります」(元パ・リーグ球団の編成部長)
春夏連覇を狙った横浜だったが、8月19日の準々決勝で県岐阜商に延長の末、敗れた。阿部はこの試合でタイブレークの延長10回にタイムリーを放つなど2安打の活躍。17日の3回戦・津田学園戦では8回に右前適時打を放つなど猛打賞の活躍で、勝利に貢献した。次の舞台は大学野球になりそうだが、いずれプロのステージで活躍する時が楽しみだ。
(ライター・今川秀悟)
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