甲斐が抜けたソフトバンクは小久保裕紀監督が開幕前に海野隆司、嶺井博希、渡邉陸、谷川原健太を競わせる方針を明確にしていた。指揮官が重視していたのは送球とブロッキング技術だった。甲斐はこの2つの能力が非常に高い。投手陣が迷いなくフォークなど落ちる球を投げ込めるのは、ブロッキング能力が高かったからだ。さらに、「甲斐キャノン」と呼ばれる強肩で幾度もチームを救ってきた。

「正直、甲斐の穴を埋めるのは難しいと感じましたが、2番手捕手だった海野は期する思いが強かったでしょう。試合に出続けることで守備の安定感が高まり、有原航平とリバン・モイネロのダブルエースから信頼を勝ち取っている。課題の打撃も6月以降は粘り強さが出てきています。数字以上にチームへの貢献度が非常に高い。本人も手ごたえをつかんでいるでしょう」(前出のライター)

人望の厚いベテラン

 2番手捕手・嶺井の存在も大きい。22年オフにDeNAからFA移籍したが、思うような活躍をできていなかった。23年は44試合出場で、昨年は4試合出場のみ。3軍を経験した時期もあった。今年も開幕を2軍で迎えたが、4月10日に1軍昇格すると攻守で活躍が光る。5月11日のオリックス戦(京セラドーム)では自身初となる1試合2本塁打を放ち、猛打賞7打点の大暴れ。人望の厚いベテランの大活躍に、ベンチは大盛り上がりだった。5月以降に大関友久が先発したすべての登板試合でバッテリーを組んでいる。大関は目下8連勝中で10勝3敗、防御率1.53。フォーク、スライダー、カーブとキレのある直球のコンビネーションで嶺井が能力を引き出し、6月以降は3か月連続で月間防御率0点台と驚異の安定感を誇っている。DeNA時代にチームメートだった投手は、嶺井のリードを振り返る。

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