「感性が独特なんですよ。最初は『このカウントでこの球を投げるんだ』という驚きがありました。打たれるんじゃないかなと思った時もあったんですけど、嶺井さんの要求通りに投げたらきっちり抑えられて。内角に5球連続で突っ込んだり、外角一辺倒の極端な配球があるんですけど、打者を打ち取るための明確な意図がある。僕を含めて直球の球速が速くない投手でも、巧妙なリードで引っ張ってもらいました」

捕手の起用法がより柔軟に

 ソフトバンクの先発マスクを見ると、海野がチーム最多の55試合、嶺井が29試合、渡邉陸が12試合、谷川原健太が9試合で続く。他球団のスコアラーは「厄介なんですよ」と漏らす。その真意とは。

「海野と嶺井では配球パターンが全然違います。捕手によってリードの仕方が違うのは当然なのですが、海野はオーソドックスな配球に対し、嶺井はこちらがイメージしていない球を投げさせることがある。今年のソフトバンクは同じ投手でも、捕手によって打者への攻め方がガラッと変わる印象がある。先発投手は予告されますが、捕手は試合当日まで分からない。途中出場で代わる時もあるし、データを分析するのに神経を使いますよ」

 正捕手を固定せず、投手との相性などを配慮して複数の捕手を起用するのは現代野球のトレンドになっているが、ソフトバンクは甲斐という大黒柱が抜けたことで、捕手の起用法がより柔軟になっている側面があるかもしれない。

 日本ハムとハイレベルなデッドヒートは続く。残り38試合。勝負所を迎える中、縁の下の力持ちでチームを支える捕手陣の活躍から目が離せない。

(ライター・今川秀悟)

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