整備新幹線の建設費は、まずJRに線路などを貸し付けて得られる収入を充て、残りの3分の2を国が、3分の1を地方自治体が負担する仕組みだ。

 西九州新幹線は本来、長崎~博多を結ぶ計画だったが、22年9月に開業したのは長崎~武雄温泉間のみ。武雄温泉から先、新鳥栖までのルートは決まっていない。沿線の佐賀県は計画自体を「白紙」と表明している。

 佐賀~博多間は新幹線だと約20分とされるが、現状の在来線特急でも最速35分ほど。さらに、新幹線建設費の負担に加え、並行在来線の減便が見込まれるなど、地元にとってメリットは乏しい。そのため、佐賀県は延伸に応じていない。梅原さんは言う。

「北陸新幹線も、米原ルートにした場合、滋賀県が建設費の一部を負担するうえ、JR西日本から経営分離される並行在来線の北陸線の運営も県が引き受ける必要があり、県側の大きな負担となります」

行き詰まり打開するには

 実際、7月下旬には滋賀県の三日月大造知事は定例会見で「求めていないことを押しつけられることは好ましくない」と、米原ルートに否定的な考えを示した。残る「舞鶴ルート」は、費用対効果や速達性などの面で劣っているとされる。とはいえ、「小浜・京都ルート」は地元の同意を得ることは難しい。

 梅原さんは、行き詰まりを打開するには、「ルート選定の見直しが必要」と提案する。

「環境に配慮して、京都の街を避けるルートです。小浜から南下し、京都市の西側を大きく迂回して、長岡京市か向日市に北陸新幹線の京都駅相当の駅をつくり、そこから今の京都駅に在来線でアクセスする。これが一番現実的だと思います」

 大阪までの道のりは、まだ遠い。

(AERA編集部・野村昌二)

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