JR敦賀駅にとまる北陸新幹線の車両
JR敦賀駅にとまる北陸新幹線の車両
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「小浜・京都ルートありきではなく、米原ルートも比較検討したうえで判断すべきだ」

【図解】北陸新幹線「敦賀以西」のルート案はこちら

 7月下旬、大阪府の吉村洋文知事は定例記者会見でこう語った。「小浜・京都ルート」や「米原ルート」とは、北陸新幹線の敦賀~新大阪間の延伸計画のこと。

 北陸新幹線は1973年、太平洋側で災害が起きた際の東海道新幹線の代替ルートとして、東京から長野、富山、金沢などを結び大阪までつなぐ路線として整備計画が定められた。97年に東京~長野、2015年には長野~金沢。そして昨年3月には金沢~敦賀間が開業し、残るは敦賀から先、新大阪までとなった。

「米原ルート再検討」がトップ当選

 敦賀~新大阪間のルート案は3つあった。1つ目は、福井県小浜市と京都駅を通る「小浜・京都ルート」。2つ目は、敦賀から滋賀県の米原駅を経由し京都駅へつなぐ「米原ルート」。3つ目は京都府舞鶴市を経る「舞鶴ルート」だ。2016年、与党のプロジェクトチームは、移動時間の短縮効果などから「小浜・京都ルート」に決定し、25年度の着工を目指していた。だが、現行計画では京都府内の大部分がトンネルになる予定で地下水への悪影響や残土処理などを懸念する声が強まった。昨年暮れには、京都の約1千カ寺が加盟する「京都仏教会」が同ルートを「千年の愚行」と断じ、今年になって計画の白紙撤回を要求。着工は事実上、頓挫していた。

北陸新幹線 敦賀以西の3ルート案
北陸新幹線 敦賀以西の3ルート案

 そうしたなか、先の参院選で再浮上したのが「米原ルート」だった。

 元アナウンサーで、日本維新の会の新実彰平氏が「小浜・京都ルート」による京都府内の地下水への影響や財政負担を指摘し、「米原ルート再検討」を訴えトップ当選。冒頭の吉村知事の発言も、これを受けたものだった。さらに8月上旬には、北陸新幹線建設促進石川県民会議が「小浜・京都ルート」で年内に課題解決のめどが立たない場合は、「米原ルート」を含めて検討するよう政府に求める案を決議した。

地元のメリット乏しい

 これで「米原ルート」が現実味を帯びてきたかと思いきや、鉄道ジャーナリストの梅原淳(じゅん)さんはこう指摘する。

「整備新幹線の建設には沿線のすべての自治体の同意が必要で、米原ルートの場合は滋賀県の同意も不可欠です。政治家であろうが、誰が何と言おうと、滋賀県が認めない限り建設はできません。西九州新幹線のケースと同じです」

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