20年付き合っている彼を父も認めず
母の信仰心は強く、『婚前交渉は地獄に堕ちる』と言い、小学校時代にいじめに遭ったときは、神のご加護を願ってか、スカートに聖母マリアのメダイを縫いつけられたこともあったという。
なかなかに強烈なキャラクターの母だが、亡き父もすべてを認めてくれたわけではなかった。
「20年付き合っている彼のことも、父は最期まで認めないままでした。彼が地方出身なんですけど、私がついていっても田舎でやっていけるわけがないって。まあ、もともと私は結婚に興味がないし、するつもりはないので、相手が誰であっても法律婚をする予定はないですけどね」
綾子さんはそう言うものの、自分の望みを叶え、かつ両親のことも拒絶せず、絶妙な折り合いをつけているように感じた。
人生の目標がわからない
そんな綾子さんは、編集者として素晴らしいキャリアがあるにもかかわらず、こんなことを言う。
「これをやれば幸せに近づくみたいな、そういうものがないまま50年生きちゃった感じかな。目標がわからない。ちゃんとビジョンのある人が羨ましいですよ」
とはいえ、傍からはとても「目標がなかった人」には見えない。ビジョンはあるのに、自分でそれを認めていないだけではないのか。
「そうなんだと思います。見えているけど、見えていない。これ、どうしたらいいのかなあ」
自分でも悩んでいるようだ。
褒められると霞がかかってぼんやり
「人から褒められても、私はいつもその詳細を忘れるんです。これまでやってきた仕事とか、自分の根幹を褒められたときに何を言われたのか覚えていない。不思議だけど、褒められている最中に霞がかかって、ぼんやりしちゃうんです」
聞けば聞くほど、綾子さんの自己否定感は徹底していた。なにがなんでも自分の価値を認めないかのようだ。
「本当ですよね。頑なに認めない。でも『認めていない』ってことに、最初は気づかなかったんです。何人かの人に、『あなたは自分のいいところを理解していない、受け入れていない』って言われたことがあって、そうなんだあって。じゃあどうしたらいいんだろうって一生懸命考えた結果、きっと言葉があれば私は認めるんだろうなって思ったんです」
綾子さんの出した答えは、「言葉」だった。