AERA 2025年8月11日-8月18日合併号より
AERA 2025年8月11日-8月18日合併号より

高見沢:こいつ(桜井さんの方を指し)、歌っていなかったんですよ。翌々日、ライブのリハーサルで、「あのさぁ、『恋人になりたい』の真ん中、歌っていなかっただろ?」って問いただしたら、「あぁ、歌ってなかったよ~」って明るく言うわけ。「入れなかったんだよ。あまりにも忙しくてさ」って。なんだそれは!ってなりましたが、思わず笑ってしまいましたね。実際は「入らなかったの?」それとも「入れなかったの?」。

桜井賢(以下、桜井):入れなかったの。キーが取れなかったの。

高見沢:何十回、何百回やってんだよ。

桜井:何百回やろうが、間違えるものは間違えるの! キーが取れないのに歌い出したらグシャグシャになっちゃうよね。

高見沢:僕らも真ん中がいないから、歌いながら探しているわけ。下と上はいるから。ものすごいカオスだった、なんだこの曲って。「ごめん、入れなかった」って言ってくれれば解消できたのに、ずっとほったらかしにしていたんですよ。

桜井:お客さんも「え!?」って顔していたけど、私は口は動かしていましたからね。

坂崎:よく、口は動かしてるよね。マイクのせいにすることもあるんです。

高見沢:笑いましたよ。だから、ずーっとライブでこの話はしています。

坂崎:でもね、ステージは生もの、しょっちゅうそういうことは起こります。

――桜井さんの艶やかな声が聞こえないコーラスを想像するだけで、なんとも不思議な心地がする。

10万人のコーラス

――さて、次は「奇跡の一曲」について話を聞いた。すると、ランキングにもあった「ROCKDOM-風に吹かれて-」だという。この曲は、1986年に開催されたライブ「THE ALFEE 1986・8・3 SWEAT & TEARS TOKYO BAY-AREA」のアンコールで、「ラブレター」に続いて、初披露された。

坂崎:奇跡と言えば、「ROCKDOM-風に吹かれて-」じゃない?

高見沢:そうだね。

坂崎:このライブのために作った楽曲で、まだファンは誰も聴いたことがない新曲を、アンコールで初めて披露したんです。

高見沢:10万人の観客の前でね。

坂崎:それが、最後、大合唱になったんだよね。

高見沢:「え!? なんでこの曲を知っているの?」って驚きましたね。

坂崎:3番まで歌って、サビのコーラスを最後、繰り返すんですよ。その繰り返しで覚えてくれて、みんなが歌ってくれたんですね。

高見沢:その繰り返される大合唱の中、俺たちはステージからはけていったんだけど、あんなの想定していなかったですね。

坂崎:10万人のコーラスが突然巻き起こったのは、感激でしたよね。だから、もうすぐ40年がたとうとしているのに、ランキングにも入ったんでしょうね。

次のページ キツイときに作った