選挙で勝てる見込みがない立憲民主党

 だが、いくら執行部人事を変えてみても、展望は開けない。

 そこで、苦し紛れに出てきたのが、自公との連立でなんとか存在感を演出しようという作戦だ。しかし、単に連立入りというのでは、自公の補完勢力に成り下がったという批判を受け、次の衆院選でさらに負ける可能性が高くなるので、何か大義名分が必要だ。そこで使われることになったのが副首都構想だ。大阪を副首都にという公約でなんとか目先を変えて「やってる感」と新たな夢を演出する。これに石破自民が協力すれば、公約実現のための連立入りだという言い訳ができる。

 維新内には、石破氏ではダメだとして、新たな自民党総裁が選ばれてから連立入りすべきという意見も強いが、石破氏が粘って首相の座にとどまれば、そうも言っていられなくなる。自力で党勢拡大を図る力はないからだ。そこで、なんとか副首都構想の実現可能性が出てきたように見せかけて、次の衆院選に臨みたいということで、石破氏のままでも自公との連立を組むか、少なくとも、なんらかの形での部分連合のようなものが成立する可能性は十分にある。

 ただし、維新が自公との連立に動くのを見れば、他の野党からは、自公を助けるのかという強い批判がなされる。したがって、衆院選がいつあるかわからないという状況では、安易に連立入りするのはためらわれる。

 そこで、注目されるのが、立憲民主党の動きだ。

 立憲の野田代表は、選挙直後は、自民を強く批判していたが、4日の衆院予算委員会では、一転して、石破氏に政策協議を呼びかけ、石破氏がこれに応じるという場面を作った。同じ安保タカ派、財政規律重視派同士で気脈を通じるという面もあるが、野田氏には、もっと別の事情がある。

 それは、解散しても立憲が選挙で勝てる見込みがないということだ。参院選でこれだけ自公の票が落ち込んだのに、立憲の比例の得票は伸び悩み、国民民主や参政にも及ばなかった。屈辱的な「敗北」である。この結果に、同党の両院議員総会では、野田代表への批判が吹き荒れた。江田憲司元同党代表代行のホームページのコラムによれば、「野田代表のリーダーシップには期待していない」「SNSの視聴が野田代表は数百、玉木(雄一郎・国民民主)、神谷(宗幣・参政)両代表は数十万」「執行部として参院選敗北の責任を取るべきだ」、立憲は「オワコン」「増税派」「左派」「事故物件」とまで言われ「有権者から相手にされていない」「若者世代は立憲スルー」「党は解散した方が良い」「大企業病ではないか」等々の批判が出たという。

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