(劇場版「鬼滅の刃」無限城編第一章 第1弾の入場者特典)
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【※ネタバレへの注意】以下の内容には、既刊のコミックスと劇場版のネタバレが含まれます。

【画像】猗窩座より強い?「無限城編」に登場する上弦の鬼はこちら

 劇場版「『鬼滅の刃』無限城編 第1章・猗窩座再来」の勢いが止まらない。9日からは劇場版入場者特典が新たに400万人分用意されており、さらに全国74館の劇場でMX4D、4DXの上映実施が決定している。

 鬼殺隊と上弦の鬼、そして鬼舞辻無惨との死闘の幕開けは、鬼殺隊の長・産屋敷耀哉の死から始まった。新しく後継者となったまだ幼さの残る当主を支え、戦闘の要となるのは、「鬼殺隊最強」の岩柱・悲鳴嶼行冥だ。

 しかし、悲鳴嶼は過去の経験から心に深い傷を抱えていた。確信に満ちた戦い方とは裏腹に、自分自身のことを“嫌って”いるようにすら見える。悲鳴嶼はいったい何に心を痛め、何のために戦い続けるのか。新刊「鬼滅月想譚 ――『鬼滅の刃』無限城戦の宿命論」を著した四天王寺大学文学部の植朗子准教授が考察する。

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■岩柱・悲鳴嶼行冥の圧倒的な頼もしさ

 無限城戦で鬼たちを圧倒したのは「鬼殺隊最強の男」悲鳴嶼行冥だった。鬼殺隊の長・産屋敷耀哉とその家族の壮絶な自爆、鬼の珠世との共闘といった、無惨の虚をつく作戦の数々をすべて把握していたのは、悲鳴嶼だけだった。無限城落下後は、最年少「柱」の時透無一郎をかばいながら、鬼側の戦力を削りつつ、冷静に状況判断に努めていた。

 身長220センチ、体重130キロ、鬼と比べても引けを取らないその体躯は、味方としてこれほど心強いものはない。あれほど慎重に鬼殺隊から身を隠し続けていた珠世が、共闘作戦を承諾したのは耀哉の采配のためだけではなく、悲鳴嶼の存在も大きいだろう。

 無惨に右目を潰されたむごたらしい状態でも、珠世はまるでその運命を預けるかのように「悲鳴嶼さん お願いします!!」と叫んでいた。これは悲鳴嶼が、“信頼できる”男だからこそ発せられた言葉なのだろう。

■隊士たちからの信頼の厚さ

 過去の場面を振り返ると、個性が強い「柱」たちは、ときおり意見が衝突することもあった。かつて柱合会議でも、気性の荒い風柱・不死川実弥と、人の話を聞こうとしない水柱・冨岡義勇の噛み合わない会話を悲鳴嶼はたった一言で収束させていた。

 悲鳴嶼の凄さはそれだけではない。あれだけ強い柱たちですら、彼の存在そのものが心の支えになっている様子がうかがえる。蟲柱・胡蝶しのぶは、子ども時代に生家が鬼に襲撃されているのだが、それを救ってくれたのは悲鳴嶼だった。童磨との死闘の最中の回想で、しのぶが悲鳴嶼の頼もしい背中に、自分が欲した「強さ」を見ていたことが描かれている。

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