
花輪さんのように子どもとともに移住する場合には、教育のことも考えなければならない。現地の公立校への進学は、シンガポール国民と永住権保有者が学費や学校の選択の面で優遇されている。こうした事情から、シンガポール在住の日本人や欧米人の保護者の多くはインターナショナルスクールを選択しているという。
「数年で帰国する日系企業の駐在員の場合はお子さんを日本人学校に通わせているケースが多いのですが、私の娘はインターナショナルスクールに通わせています。学費は日本にあるインターナショナルスクールと同程度で、年間300万円前後から(ホリデープログラムは別途)というのが一般的です」
シンガポール特有の事情として、日常生活の様々なシーンで厳しいルールや罰則が定められていることにも注意したい。たとえば、午後10時半~翌朝7時の時間帯はコンビニなどでアルコール飲料を購入できず、このルールを破ると最高1千シンガポールドル(7月9日時点で1シンガポールドル=115円弱)の罰金が科される。他にも、禁止エリアでの喫煙やゴミのポイ捨て、公共交通機関内での飲食も罰金の対象となってくる。
「処罰も非常に厳しく、一定量以上の違法薬物をシンガポールに持ち込んだ場合は死刑が科される場合もありますし、公共物に落書きをして鞭打ち刑になった外国人もいました」
最後に花輪さんは、シンガポールへの移住を考えている人に対して次のようなメッセージを寄せる。
「指導者が強いリーダーシップを発揮しており、シンガポールは日本や米国以上に政治面も安定していると言えます。文化や宗教などが異なる様々な国々の人々が共存し、ダイバーシティー(多様性)に関しても日本以上に先進的である点も魅力で、いろいろな考え方があることを学べます。ただ、現地で何らかの収入を得ることなく、完全にリタイアした生活を送るつもりであれば、それなりの資産を築いていないと行き詰まってしまう恐れもあります。実際、裕福な暮らしを続けて散財し、1億〜2億円程度の資産をあっという間に食い潰して日本に帰国するケースも見受けられるのです」
(金融ジャーナリスト 大西洋平)
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