
水があっても…温水で「風呂」状態
一方、千葉県匝瑳(そうさ)市に広がる栄営農組合の100ヘクタールの水田は、利根川から引水する「大利根用水」を利用しているため、今のところ水に不自由していない。しかし、南魚沼市の水田とは逆に、「なるべく水を張らないようにしている」と、同組合の伊藤秀雄顧問は言う。猛暑による水温の上昇を懸念しているからだ。
「通常なら、出穂時期の田には水をたっぷり張りたい。でも、そうすると、この暑さで水温が40度にもなってしまう。まるで風呂のよう。高温障害で不稔にならないか、組合員は心配している」(伊藤さん)
水深を浅く管理して、田に水を流し続けることで、水温の上昇をできるだけ抑える。いわゆる「かけ流し」だ。しかし、降水量が少ない状況が続けば、利根川の水位が下がり、十分に取水できなくなる可能性もある。
「国は、ロボット技術やAIなどの先端技術を活用した『スマート農業』を推進するけれど、結局、自然には勝てない。今後、どうなるか。戦々恐々です」(同)
新米はさらに値上がりか
今年の新米の価格はどうなるのか。東京近郊の老舗米店の店主、中村真一さん(仮名)は、こう語る。
「これまで以上の高値になりそうです。うちが仕入れている早場米のコシヒカリは今年、60キロ3万7000円の値がついた」
23年産米の卸売価格(相対価格、全銘柄平均)は1万5291円(23年9月)だったので、2倍以上になる。
「これほど高くては仕入れられない、という声も聞きます。消費者の手が届きませんから。あまりに高くて米の消費が落ち込み、『年が明けたら価格が暴落するのでは』と、心配する同業者もいます」(中村さん)
この暑さで生産量が落ち込めば、新米価格は昨年以上に値上がりする可能性がある。いつになれば、米不足が解消し、価格が落ち着くのだろうか。
(AERA編集部・米倉昭仁)
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