
水田が干上がり、稲が枯れる――。記録的な猛暑で米の生産に深刻な影響が出始めている。先日の小泉進次郎農林水産省相の「給水車も出します」発言は、渇水に悩む農家たちに冷ややかに受け止められている。
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小泉農水相は「必要があれば給水車も出します」
8月3日、小泉農水相はブランド米の産地として知られる新潟県南魚沼市の干上がったため池に給水車(散水車)で注水する様子を視察した。そして、報道陣を前に、こう発言した。
「必要があれば給水車も出します。米の収量に不安がある地域に水がきたと、そういった状況を届けていきたい」
Xではため池注水に関して、こうも発信した。「できることは何でもやります」「雨が降るまで少しでも足しになるように現場とともに乗り越えます! 現場に感謝」
実は、渇水対策の緊急措置として給水車やタンクローリーで水を運び、ため池や水田へ注水することは他の自治体でも行われてきた。つまり、この発言は全国の水量の減ったため池や水田を給水車の水で満たして回る、という意図なのか。
必要な給水車は何台?
同市でコシヒカリを生産するフエキ農園の代表取締役・笛木竜也さんはあきれ顔で、こう話す。
「また、すごい発言をしました。この時期、水不足に苦しむ農家に水を回すというなら、いったい給水車を何台用意してくれるのでしょうか。本気なのか、冗談なのか」
いまこの局面、水は必要だ。国が給水車を手配し、苦しむ農家に水を供給してくれるというなら、これほどありがたい話はない。
一方で、それがいかに非現実的なことか、笛木さんは身に染みてわかる。
そもそも、給水車の台数からして限りがある。自治体が保有する給水車は合計1330台(2021年)。最も多い東京都でさえ30台だ。工事現場などで使われる民間の散水車を合わせても、「とても全国の水不足に悩む米農家には行きわたらない」と、笛木さんは見る。

水田は干上がり、稲は枯れ始めた
水不足は深刻だ。笛木さんは心配で夜もよく眠れないほどだという。実際、渇水により、稲に深刻な悪影響が懸念されるからだ。
7月の南魚沼市(塩沢地区)の降水量は合計35ミリで、平年のわずか16%でしかない。深刻なのは同市の西側の地域で、山が浅く保水能力が低いため、「水路にまったく水が流れていない状態」だという。
「水田が干上がり、8月2日の時点で、20ヘクタールの1割弱にあたる田んぼで稲の葉先が茶色に変色し、枯れ始めました」(笛木さん)
