因島鉄工で働くインドネシア人のスワトノさん。「将来、妻と子どもを母国から呼び寄せたい」=2024年6月14日、広島県尾道市因島重井町、朝日新聞社・織田一撮影
因島鉄工で働くインドネシア人のスワトノさん。「将来、妻と子どもを母国から呼び寄せたい」=2024年6月14日、広島県尾道市因島重井町、朝日新聞社・織田一撮影
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 日本以上の速度で少子高齢化が進む韓国。「異常な受験戦争」「貧困に陥る高齢者」「増加する不法滞在者」など、さまざまな問題に直面しています。これは日本にとって対岸の火事ではありません。朝日新聞取材班による『縮む韓国 苦悩のゆくえ 超少子高齢化、移民、一極集中』から一部を抜粋して紹介します。

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 2024年5月、外国人労働者を受け入れ、企業に派遣している団体で働く旧知の男性と電話で話していたときのことだ。

「造船業界で、韓国のアジア人材の囲い込みがえげつない」。彼の「えげつない」という一言が、記者(織田一)の印象に強く残った。

 詳しく聞いてみた。8月、広島県内の造船や溶接など4社にインドネシアの10人を派遣する予定だったが、うち5人が採用を辞退したという。

 のちに、韓国の造船会社にごっそりと引き抜かれたことが判明した。

「こちらが提示した時給は1200円。韓国側は1700円。持って行かれてもしょうがない。昔はこんなことなかった」。彼はそう嘆いた。

 日本と韓国の間で、アジア各国からの労働者の「争奪戦」が起きているのだろうか。

イスラム教の「お清め」の場を増やした造船業の現場 

 ものづくりの現場で実際に確かめたい。記者は造船業が盛んな瀬戸内海の因島(広島県尾道市)に向かった。

 訪れたのは、造船のほか、金属加工など13社が入る因島鉄工業団地協同組合。船体をパーツごとに分解した船体ブロックの生産量はいまでも日本一だ。団地内で働く700人弱のうち、外国人が約270人を占める。インドネシア人が最も多く、100人近い。午後5時を回ると、外国人の労働者が自転車で続々と正門から出て、帰宅していく。

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