翌日、工場団地内にある因島鉄工を訪ねた。船体ブロックや製缶機械をつくる工場だ。インドネシア人ら約60人の外国人の労働者は欠かせない存在となっている。最近、イスラム教が定めるお祈りの際に体の一部を水で洗う「お清め」の場を増やした。イスラム教徒が多いインドネシア人に来てもらい、長く働いてもらいたいからだ。

インドネシアから韓国に行く人「増えてます」

 溶接職の外国人労働者チームを束ねるスワトノさん(37)に取材した。インドネシア人で、初来日は08年。一時帰国をはさんで、技能実習生などとして計6年間、同社で働いた。23年5月、技術力の向上などが認められ、より長く滞在できる「特定技能」という在留資格を得て戻ってきた。

 スワトノさんに「韓国に行くことを考えませんでしたか?」と聞いてみた。すると、滑らかな日本語で「ありません。若くないし、これから韓国語を覚えるのはしんどいです」。

 一方で「韓国は残業があるから給料が高いと聞いています。最近、インドネシアから韓国に行く人が増えています」とも話した。やはり、韓国の人気が高まっているようだ。

韓国大手の関係者からアプローチ

 取材を進めるなかで、記者はこんな話も耳にしていた。

「情報交換しませんか」。ある日本の造船会社の幹部のもとに24年初め、韓国の大手造船所の関係者からアプローチがあった。会ってみると、「人手を確保するにはアジアのどこの国にいけばいいか」とアドバイスを求められたという。ライバルの日本企業に相談するほど、韓国の造船会社も人手不足に悩んでいる姿がにじむ。

(朝日新聞取材班)

縮む韓国 苦悩のゆくえ 超少子高齢化、移民、一極集中 (朝日新書)
こちらの記事もおすすめ 「非婚主義」に走る韓国人女性たち 難しい結婚とキャリアとの両立 社会への失望も背景
[AERA最新号はこちら]