働け、自分の食い扶持は自分で稼げ、産め、産んだなら責任もって育てろ、甘えるな、頑張れ、頑張れ、頑張れ、頑張れ! 仕事と子育てを両立させてこそ「今どきの女の当たり前」であり、どんなに努力しても褒められることはない。なにより女が睡眠時間を削ってギリギリの体力で家庭も仕事も頑張ったとて、そもそも女である限り男と同じように評価されるわけではない。負けが定められている激しい競争に無理やり参加させられている苦しさを感じている女性が無数にいるのが、今の日本だ。そんなときに、「(女性に)働け、働けってやりすぎちゃった」と言う神谷氏の言葉に立ち止まってしまう女の必死さを軽くみることはできないのではないか。

 神谷氏は、「龍馬プロジェクト」というものを仲間たちと15年前に立ち上げ、参政党をここまで育ててきた。おそらく「現代の下級武士である地方議員」(by神谷氏)であった自分を龍馬に本気で重ねている節がある。神谷氏の演説では度々、地方議員の集まりが、たった15年でここまで育ったことが英雄伝のように語られるが、それは本気でやればできる、信じれば報われる、努力と精神論で世界を変えられるという自己啓発セミナーのようなノリである。そして、そういう神谷氏に傾倒する人は少なくない。だいたい今の国会議員の多くが二世や三世で、経済的な苦労を知らず、難関国立・私立大を卒業していて、医者とか弁護士とかの国家資格を持っている人も少なくないエリート集団だ。そういう中でエリートとは言えない神谷氏の「のしあがり方」は、ある種の憧れを抱かせるだろう。人は勢いのある勝ち馬に乗りたいものである。

 SNSを眺めていたら、参政党の差別的思想に怒る左翼的な男性が、参政党の女性に威圧的に絡んでいる映像が流れてきた。その男性に対し参政党の男性が「女囲んで何してんだよ、男として情けない」と諫めていた。左翼的な男性は「それは逆に女性差別だ」というような反論をしていたが、男も女も平等に殴る、といった左翼的なマッチョさについていけない女は多いのではないか。「男の俺が女を守る」というのもミソジニーの裏返しでしかないが、怒鳴る男よりマナーはいい。今回、参政党に傾倒する人々をバカ呼ばわりしたり、女性の支持者に容赦ない罵りの言葉がかけられたりするのを見るが、そういう暴言を平気でぶつける左翼的な人々の暴力性は、もしかしたら、女性たちが既存の野党から離れていった原因なのではないか。

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