中国資本による「北海道買収」は偶然か
中国の水危機が国内統治に与える影響も無視できない。2024年には広東・四川で水不足をめぐる小規模な抗議活動が散発的に報告され、中国のSNS上では「水貧民」「水分配の不平等」などの言葉が拡散された。
すでに中国共産党は、電力不足によって一部都市で工場の操業時間制限や計画停電を実施しており、今後の水力依存度が高まることで、この傾向はさらに強まる可能性がある。
また、中国国内の一部地域では、水を求めた移住が始まっているとの報告もある。仮にこの傾向が加速すれば、国境を越える動きも否定できない。近未来に日本や韓国などの近隣国に「水難民」が押し寄せる可能性を考えておくべきだろう。
北海道では、過去10年にわたり水源近くの土地が中国資本によって相次いで取得されたことが報告されている。たとえば、羊蹄山からの水源に近いニセコや倶知安町、平取町豊糠地区などだ。
これらの動きは、中国の水危機と無関係なのだろうか。
日本にとって「対岸の火事」ではない
水源ではなく「観光開発目的」「別荘建設目的」などと説明もされることもあるが、その土地に水源がある、あるいは近くに水源があるのであれば、国家戦略の観点から見れば計画的な動きの可能性は否定できない。
水資源に乏しい大国が、水源のある国を囲い込もうとする事例は他国でもある。中国が「北海道の水源を確保しようとしている」という可能性を全否定することは、リスク管理の観点からも危険だ。
中国の水問題は、単なる国内インフラや地方政治の話ではない。農業・工業・エネルギーといった生産活動が「水」に依存している以上、その供給不安は必然的に食糧市場・エネルギー市場・物流サプライチェーンを通じて世界に波及する。
世界一の小麦生産国である中国が水不足で減産に追い込まれれば、世界の穀物価格は跳ね上がる。電力不足による工場停止が増えれば、部品供給の混乱からグローバルな生産網もまた不安定化する。
日本にとっても、この問題は「対岸の火事」ではない。むしろ、その最前線に立たされる可能性すらある。