
ただ、ビザの資格によっては外国人も「国民待遇」とされる。シンガポールで長期在留ビザを取得していた青山さんも、観光施設の利用に際しては「国民待遇」だったという。日本の観光施設で二重価格を導入する際は「外国人にはビザ、日本人にはマイナンバーカードの提示を求めたうえで、シンガポール同様、長期在留資格のある外国人は『国民待遇』とするスタイルが望ましい」と青山さんは提案する。
「大事なのは、『外国人』を一括りにして排外的な視点で捉える風潮をなくしていくことです。そのためにはビザの種類による区別とともに、違法行為をした外国人には厳しいペナルティーを科していく必要があります」
青山さんが「二重価格は罰則規定とセットで導入する必要がある」と唱える理由はこうだ。
「シンガポールの場合、外国人が二重価格の割高な支払いを避けようと偽造ビザを提示したことが発覚すると、二度と入国できなくなる可能性もあるほど厳しい罰則を科されます。これが心理的な抑止力として効いています」
法的拘束力のある罰則は公的機関でないと規定も行使もできない。このため青山さんは「行政のコミットは不可欠」だと話す。ではなぜ、そうまでして不正を徹底防止する必要があると考えるのか。
厳しい罰則規定のないまま二重価格を導入し、不正を図る外国人が続出したり不正が野放しにされていたりした場合、「排外世論がかえって高まりかねない」との懸念が青山さんにはあるという。米国でトランプ政権が推進する移民排斥の世論感情を生んだ背景にも、これまでの寛容な移民政策の反動の側面がある、と青山さんは考えている。
「米国では長年、違法入国した移民と合法的に暮らしている移民を分け隔てなく扱ってきたことが、移民への忌避感情を増幅させてしまった面もあると見ています。日本ではそういう段階に至る前に、スピード感をもって外国人政策に関する法整備を推進し、合法と違法の線引きを明確化すべきです」