多くの客でにぎわうジャングリア沖縄。二重価格の導入の先行事例としても注目される
多くの客でにぎわうジャングリア沖縄。二重価格の導入の先行事例としても注目される
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 訪日客などを対象に料金の価格差を設ける「二重価格」。国内でも一部のテーマパークや自治体で導入や検討が進みつつある。シンガポールの事例に詳しい早稲田大学大学院の青山瑠妙教授に導入の意義や課題を聞いた。

【注目アンケート】二重価格の導入に賛成する人の割合は

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 7月に開業した沖縄のテーマパーク「ジャングリア沖縄」は二重価格の導入でも話題になっている。12歳以上の国内客の入場料(1Dayチケット)は6930円(税込み)なのに対し、海外客は8800円(同)。ネット上では「海外では当たり前」と歓迎する声と、「差別的」と批判する声などに賛否が分かれている。

 訪日客が多い自治体でも、二重価格に関する議論は始まっている。

 兵庫県姫路市は世界遺産・姫路城の入城料で日本人観光客より外国人観光客を高くする改定案を一時検討した。その後、市議会などから「外国人のみを対象とするのは差別的」といった声が上がり、2026年春から日本人・外国人を問わず市外からの来訪者は割高な料金設定とすることになった。

 一方、京都市は27年度中に市バスの混雑対策として市民と観光客の運賃に差をつける「市民優先価格」の導入を目指している。ただ、外国人観光客向けの価格を高くする二重価格については松井孝治市長が昨年7月の記者会見で、「日本人観光客と外国人観光客を差別する合理性がどこまであるのか」と述べるなど慎重な姿勢を示している。

 日本を訪れる外国人観光客が増え、地元住民の暮らしに影響が出るほどの混雑やオーバーツーリズムが社会問題化するなか、「住民の不満」をこれ以上置き去りにできない状況が表面化しつつある。実際、日本を訪れる外国人観光客に対する暴言がネット上に氾濫し、参院選ではこうした声に押されるように、「外国人政策」が論点に急浮上した。

 そんななか、外国人との共生の観点から二重価格の導入を提起しているのが、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科の青山瑠妙教授(国際政治)だ。

「二重価格の導入は排外主義的な世論の緩和につながる効果を期待できると考えています」

 青山さんが参考事例として挙げるのはシンガポールだ。植物園や動物園、観光客に人気の屋上プールなど、ほほすべての観光施設に二重価格が設定され、外国人は割高な入場料を支払うルールが浸透しているという。

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